「人と違うほうがカッコいいじゃん」と思えるようになった
── いまはアメリカと日本と、両方のよさが溶け込んで新しい価値観も生まれている状態ということでしょうか。
與さん:そうですね。僕は今、海外のことを知らない日本人ではないし、純粋なアメリカ人でもない。そんな自分をうまく解釈できるようになった気がします。「自分はスペシャルなんだ」って思えるようになったというか。長い間ずっと、まわりの人に比べて変わっているのって嫌だなと思っていたんですけど。日本では、人と違うことを言ったりやったりするのって抵抗ありませんか?
── 日本では、みんな同じがいい、それが当たり前、という考え方があると思います。
與さん:そう。僕も日本にいるときはずっとみんなと一緒がよかったんです。でも、アメリカで生活するなかで、いろいろな個性をもつ魅力的な人たちと友達になって、大きく変わりました。「人と違うほうがカッコいいじゃん!」とか「人と違うことを考えられるのって素晴らしいことだよね」って考えられるようになりましたね。

── カミングアウトされたときには、ドキュメンタリー映画も撮影されているとお聞きしました。
與さん:はい。3年間、密着で200時間くらい撮影していただきました。今編集の段階です。ストーリーの概要はプロデューサーの方々から聞いているものの、どんな内容に仕上がっているのかはまだ確認していないんですが。
── 鋭意製作中なのですね。ドキュメンタリー映画でどんなメッセージを届けたいですか?
與さん:まず、LGBTQ+の方に対しては、「ひとりじゃない」と伝えたいですし、自分に自信を持ってもらえるきっかけになればうれしいですね。LGBTQ+ではない方たちにもぜひ観てほしい。自分で言うのもなんですが、「あきらめないで行動し続けたら、人生ってちゃんと進んでいく」ということを僕自身の姿から感じてもらえたらいいなと思っています。
僕って昔から「行動力あるよね」って言われるタイプで。自分ではピンとこなかったんですけど、最近は「たしかに行動力、半端ないな」って思います(笑)。本当の自分にやっと気づけたような感覚です。行動するぶんリスクは取っているけど、むしろそれがすごく楽しい。行動すれば何か必ず一歩前進するから。人生ってやっぱりリスクのある選択をするからこそ人生が変わるような出来事も起こせると思うんです。逆に、自分が動かなかったら状況は何も変わらないですし。僕を見て、ひとりでも多くの人に「こんなおもしろい生き方をしてる人がいるんだな」って思ってもらえたらうれしいです。
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本当の自分を出せるようになった今、ますます活動的になった與さん。海外を旅する時間が増え、つい最近までイタリアのフィレンツェで過ごしていたとか。その前に訪れたロンドンでは今まで聴いてこなかった70〜80年代の音楽にハマり、新しい自分を発見する経験になったそうです。
PROFILE 與 真司郎さん
あたえ・しんじろう。1988年11月京都府出身。2005年、日本の男女混合パフォーマンスグループ、AAA(トリプル・エー)のメンバーとしてデビュー。2016年から2021年の活動休止までDOME TOURを5回開催。ソロアーティストとしても2019年、初のソロライブアリーナ公演、2021年には全国アリーナツアーを開催。2023年7月に開催したファンミーティングで活動開始を発表。現在、海外を旅しながらアーティスト活動を行っている。2025年4月には、自身初となるフォトエッセイを発売予定。
取材・文/高梨真紀 写真提供/與 真司郎