すっかりママのイメージが定着した芸人の横澤夏子さん。結婚、出産を経て、ブレイクのきっかけにもなった持ちネタの「ちょっとイラッとくる女」に対する思いにも変化が──。(全4回中の3回)
同期のニューヨークから「あれは予言の書だ」と
── 横澤さんといえば「ちょっとイラッとくる女」のネタがブレイクしました。当時は独身で、ネタにする女性は年上の方が多かったかと思いますが、結婚や出産を経てネタへの思いに変化はありますか。
横澤さん:もともと私は結婚願望が強く、とにかくお母さんになるのが夢でした。独身時代からお母さんネタをずっとやってきたのは、憧れからくるものもあったと思います。20代のころに作った「子どもが貼ったシールをつけてそのまま職場に来たお母さん」のネタでは、シールを発見したあと「も〜、やだ〜」と喜んでいる素振りで言っていたんです。

でも実際にお母さんになって、服に娘がつけたシールが本当に張ってあったのを楽屋で見つけたとき、それを無言でサッと剥がしてゴミ箱に捨てた自分がいました。そこで「あのネタはちょっと違っていたのかも」と気がついたのですが、そう思うようになったこともすごく新鮮でした。私が思っていた子育てあるあるや理想は、現実では意外と違うんだなって。
── 自分の知らなかった一面への気づきがあったそうですね。
横澤さん:人ってこんなにも怒れることにびっくりしました。「こんなことで私って、いっぱいいっぱいになっちゃうんだ」と我に帰ることがありますし、あんなに怒っていたのに3分後はものすごく冷静になることも。マックスボルテージで怒っていても、収まるとまるで別人だったかのような気分になることもあります。やっぱりわが子のこととなると、きちんと育ってほしいという思いが強くなって、必死になりすぎている部分があるのかなと思います。
── お母さんネタのほかに、お局のネタも印象に残っています。
横澤さん:お母さんに憧れがあって、養成所卒業後からお母さんネタをしたり、習い事に勤しむ女性のネタをしたり。同期の芸人コンビ・ニューヨークから「夏子自身が今までやっていたネタを追っていて、予言の書のようだ」と言われたことがありましたが、自分でも本当にそう思います。
お局のOLさんというネタがあって、「おはようございま〜」「ありがとうございま〜」と、キャピキャピ言う若い子に対して「すが落ちちやってるよ、拾って〜」とか、「謝って済んだら警察いらない」というセリフがあるのですが、周りの年下が多くなってきた今、絶対に予言の書にならぬよう自分のネタを反面教師にしています。