「お前、健常なんじゃないか?」と思うほど成長し

── 現在8歳の夏斗くんですが、大変だなと思うところと成長したなと思うところを教えてください。

 

島村さん:今までは妻が息子を支援学校や療育に、娘を保育園に車で送迎してくれていたのですが、夏斗の体が大きくなってきたことで、妻がとうとう腰を痛めてしまったんです。「ぼくは鍛えてきたし、パワーもあるから大丈夫!」と送迎を交代したものの、最近はぼくでも結構キツくて。

 

赤ちゃんって、小さいころは抱っこで、大きくなるにつれて歩けるようになるじゃないですか。でも、夏斗は赤ちゃんのまま体が大きくなって意思が出てきたというような状態なんです。「絶対に抱っこされないぞ」みたいな感じで地面に張りついた状態から抱き上げたり、抱っこしているときに「おろせー!」と服を噛んだりと動きもさまざまなので、体への負担が大変だなと思います。

 

成長は、日々感じています。重度障がい者だからいろいろなことができないのでは?というイメージがあるかもしれませんが、ずっと見ているとめちゃくちゃ成長しているんですよ。診断がついた当初は「もしかしたら、一生歩けないかもしれない」と言われたのですが、5歳のときに突然歩けるようになりました。小さいときは、夜中でも冬でも服を脱いで裸になっておしっこをして、ひもがついたズボンを履かせてもひもを引っ張ったり、ボタンがついている洋服を着せてもボタンをはぎ取ったりしていたのに、今はおむつを叩いて自分でトイレを表現できるようになりました。

 

支援学校に通うようになってからは、「おむつを替えるよ~」と言うと、自分で脱いで自分で新しいおむつを持って来るし、トイレでおしっこやうんちをできる日も増えてきました。ほかにも、ちょっとしたことで笑うというアンジェルマン症候群の特徴もあって小さいときはずっとニコニコしていたのですが、最近は嫌なことは嫌だし、泣くときは泣くし、怒るときは怒るし。もしかしたらずっと笑っているだけのほうが楽だったのかもしれませんが、泣いたり怒ったりできることに感動しました。ゆっくりかもしれないけど、成長を重ねる夏斗を見ていると「お前、健常なんじゃないか?」と思うくらいです。

 

夏斗くん8歳のお誕生日を祝う島村さんファミリー

一方で、複雑な思いもあります。家を建てたとき、夏斗が出て行かないように、リビングと寝室に鍵をつけたんですね。建てた当時はまったく想像できなかったのですが、成長とともに鍵を開けられるようになり、急いで知り合いの大工さんに追加の鍵をつけてもらったんです。でも、窓の鍵の補助ロックにはまだ気づいていなくて。脱走などの安全面を考えると「このまま気づかないでくれ」という祈りもあるけど、それだと「成長しないでくれ」ということにもなると思うので、なんだか複雑な感情になることがあります。

 

── 家の外に出たりすることもありますか?

 

島村さん:あります。夏場に目を離したすきに家の前に出していた家庭用プールで遊んでいたり、冬場にガチャっと音がして玄関先に急いで行ったら、外に出てドアの前でブルブルと震えていたりしたことがありました。ダブルロックなどの対策していてもちょっとした危険がどこにあるかわからないので、戦々恐々としています。

 

ただ、6歳の娘がしっかりしてきて、かなり戦力になってくれていて。子どもたちが小さいころは、お風呂に入るときもドアを開けて耳を澄ませながらシャワーを浴びて、夏斗がキッチンで水をジャーっと出した瞬間に裸のまま走って行くような生活だったのですが、今はサラに「ナツが何かいたずらしたら呼んでね」とお願いして、お風呂に入れるようにもなりました。