業界のタブーを乗り越えた商品の「ある特徴」

── 鈴木靴下ではどんなお仕事を?

 

鈴木さん:私が入った当初は商品を公式サイトで販売していましたが、お客様から注文が入ると、1件ずつお礼のメールを手打ちして、手書きで納品書を作成するアナログな対応でした。それでは効率が悪いし、もっとお客様に商品の魅力を直接伝えたいと考えて。まず楽天市場に出店し、次により深い関係性をお客様と構築できるよう、自社の本店サイトを立ち上げました。私自身、CA時代からお客様に直接対面して喜んでいただくところにやりがいを感じていたというのもありました。

 

楽天市場店ではお客様からレビューをいただくと定型文ではなく、一人ひとりに対してお返事を書いています。そうした積み重ねもお客様からの信頼につながっているのかもしれません。今年で楽天に出店して10年になりますが、楽天総合ランキングでは2億点以上ある商品の中で1位になり、やってきたことが少し報われた想いがありました。

 

── さらに、鈴木さん自身も、CAの経験を活かしたCAのためのストッキング「Flight Stockings(フライトストッキング)」を開発・販売されています。

 

鈴木さん:CA時代の足の悩みが、「汗」「蒸れ」「臭い」でした。私だけでなく、CAはみんな同じ悩みを持っていましたね。長距離路線で仮眠をとるときは、周りに臭いで迷惑をかけないようにと、みんな脱いだ靴をひっくり返しておくんです。足元に関わる仕事をするなら、当時の悩みを解決する商品を作れないかと考えて。「元CAが考えたCAのためのストッキング」と思いつくも、ターゲットを絞りすぎて売れないんじゃないの、なんて言われもしました。だけど、「CAの同期のみんなに喜んでほしい」思いが強く、そこは自分の考えを貫きました。

 

鈴木みどりさん開発のCAのためのストッキング「Flight Stockings(フライトストッキング)」

── 「Flight Stockings(フライトストッキング)」の特徴は?

 

鈴木さん:まずストッキング全体に消臭機能のある加工材をつけました。そのうえで足裏に綿をつけています。ストッキングの素材はナイロンなので汗を吸いにくく、綿をつけることで少しでも足裏の汗を吸いやすいようにとの考えでした。ただ、鈴木靴下はストッキングの工場は持っていないので、外注することになります。しかもこれは現場(工場)からすると作業が複雑で、ロスがでやすく嫌がられ、どちらかというとタブーだったようです。外注を探したものの、売れる見込みが立たないのにこだわりだけを持っている、私のような小娘に賛同してくれるところはなかなかありません。最終的に「それだけの熱意で本当にこだわったものを作るのなら一緒にやってあげよう」という工場が大阪に見つかり、商品化に踏み出しました。

 

以来、その工場の方とずっとご一緒しています。「Flight Stockings(フライトストッキング)」には消臭機能のあるTioTioプレミアムという加工材を使っています。これは衣類などにも使われていますが、ストッキングで使わせてもらっているのは、現在は弊社の商品だけのようです。消臭機能はピカイチだと自負しています。実証したデータでも、汗の臭いの原因となる代表的な臭気成分に対して、99%の消臭性が確認されています。

 

CA向けのストッキングなので、CAの仕事の手助けになるよう、パッケージにも工夫を施しました。パッケージは本来は捨てるはずのものですが、この商品は切り離せば指人形になるイラストや、外国のお客様が日本で活用できる日英のコミュニケーションカードなどを印刷しました。これもCA時代の経験からきたものでした。たとえば、機内で赤ちゃんが泣き出したとき、CAさんが(パッケージにある)指人形を取り出してアクションすれば、親御さんの助けになるかもしれません。海外から初めて日本に来られた方には付属のコミュニケーションカードをお渡しすれば、日本で交流をするきっかけにもなるかもしれない。ちょっとしたことで、お客様にとってそのフライトがすごく心に残るものになると思うんです。