「学校を変える」選択をするのはなかなか難しかったと語るフリーアナウンサーの政井マヤさん。しかし、不登校になった子どものために下した大きな決断により、子どもはトンネルを抜け、まるで羽が生えたように元気に学校に通い出します。(全3回中の2回)

「転校」という選択肢があるとすら思っていなかった

政井マヤ
政井マヤさん

── 現在、17歳、13歳、7歳のお子さんがいらっしゃいますが、不登校で悩んだ時期があったそうですね。

 

政井さん:子どもが小学生のときに、不登校になったことがありました。学校の勧めでカウンセリングなども通いましたが、状況は変わりませんでした。登校を試みても、無理をしている様子で、しばらくするとまた行けなくなる。その繰り返しでした。

 

行けるようになったのにはきっかけがあります。別の学校を見学したところ、その学校の雰囲気を子どもが気に入り、転校を決意しました。新しい学校に通い始めてからは表情も明るくなりました。あんなに悩んでいたのが嘘のように元気を取り戻し、これまで以上に活発になれました。

 

── 環境を変えたことがよかったのですね。

 

政井さん:子どもに合う環境に出合えたことが大きかったです。先生や友だちに恵まれ、学校が安心できる、楽しい場所になったのだと思います。

 

ちょうど不登校中に黒柳徹子さんの書籍『窓ぎわのトットちゃん』を読んでいて。「こんな学校があればいいのに」と言っていた子どもが、そのイメージに近い場所を見つけられたのも幸運でした。

 

日本では転勤以外の理由で転校することがあまり一般的ではなく、選択肢が限られています。ただ、海外の友人に相談したら「合わなくて学校を変わることはよくあること。誰も気にしないよ」と。「公立のオンラインスクールがある」「ホームスクールも一般的」「私立小の転出入も多い」。そんな言葉も刺激になりました。

 

ただ、転校して登校できるかどうかは行ってみないとわからないこと。学校の雰囲気、先生、友だちなど、いろんなことが影響するのだと思います。

 

── 学校を変えるのは親としても勇気が必要だったのでは?

 

政井さん:通っている学校をやめるというのは後ろ向きな気がして、転校という選択肢はなかなか出てきませんでした。今の学校になんとか通えるようになればいい、と思っていました。それでも、子どもが苦しんでいる様子を見て、無理に適応させるのではなく「合う場所を探すことも選択肢では?」と考えるようになりました。

 

また、これは後でヨシタケシンスケさんの絵本『にげてさがして』に出合ってまさしくこれだ!と思ったのですが、「逃げる」のではなく「新しい場所を探しに行くこと」はとてもポジティブな挑戦なんだと。そして、どうしようもないときには「逃げる」ことも、とても大事なことだと教えられました。

 

当時、私たちは子どもに転校先の学校の話をするときに、前の学校ではできなかったけど新しい学校に行けばできること、たとえば「英語での勉強ができそうよ」というプラスの内容を伝えるように心がけていました。今思うと「環境を変えてみよう!」と素直に言ってもよかったのかもしれません。