手術痕にリンパ液がたまって腕が上がらない

須藤みゆき
乳がんの手術後、病室で

── 乳がん発覚から2週間で手術とは、早いですね。

 

須藤さん:手術を担当できる先生のスケジュールが空いていたおかげです。ただ、気になったのは遺伝のことです。私は母を卵巣がんで亡くしており、私自身も長男出産前に卵巣に腫瘍が見つかって、妊娠中に片方の卵巣を取った経験があります。さらに乳がんになったので、弥勒に遺伝したら申し訳ないと思い、がんの組織を海外に送って遺伝性のものかどうか調べてもらいました。10年ほど前、アンジェリーナ・ジョリーが、がんになりやすい遺伝子を持っているのがわかって、がんになってもいないのに両胸や卵巣を摘出したことがニュースになりましたよね。もし私のがんも遺伝性なら治療方法が変わってきますし、その場合はもう片方の胸も摘出したほうがいいと思って調べたんです。結果は遺伝性のものではなかったので、安心しました。手術後はホルモン治療を続けています。

 

── 乳房を摘出するとその後も大変ですよね。

 

須藤さん:それはもちろん大変です。リンパ節を切除し、手術中に医師がリンパ節に転移していないか確認してくれました。さいわい転移はしていませんでしたが、切除した部分にリンパ液がたまるんですよね。手術後はパンパンに張って痛くて、腕が上がらないのがつらかったです。ブラジャーをするにもバランスが悪いですし、傷跡も大きくて、鏡を見るたびに落ち込みます。

 

退院後、自分の胸を恥ずかしく思っていたのですが、夫が「家族のためこんなに頑張ってくれた」と子どもたちに言って、みんな温かく迎えてくれたのはすごくうれしかったです。ここでもし、旦那さんが自分の胸を拒否したりしたら…つらくて夫婦関係が壊れてしまうと思います。胸がなくなるというのは女性にとって大きなことだけれど、温かく迎えてくれた家族を見て、子どもたちがそれぞれひとりで生きていけるようになるまでは頑張らなくちゃいけない、と強く思わされました。胸がなくても洋服を着ちゃえばわからないし、そんなに気にすることないんじゃないかと考えられるようになってきたんです。