ものまね芸人として本業に勤しむいっぽう、震災支援から刑務所の慰問、子ども食堂まで、30年以上にわたりボランティア活動を継続してきたコロッケさん。「相手が一番、自分が二番」の精神で培われた芸と生き方とは?(全4回中の4回)

「コロッケが来た!」と走ってきた女性が失望し

コロッケ
東日本大震災でコロッケさんの声を届けて

── 東日本大震災や故郷である熊本を襲った熊本地震の支援などを長年にわたって積極的に行われているコロッケさんですが、ボランティア活動がご自身の芸に与えている影響はありますか。

 

コロッケさん:いろんな活動を通じて思い至った僕の座右の銘は「相手が一番、自分が二番」です。震災支援の炊き出しでいろんな避難所にお邪魔したことで、あらためてそれは実感しました。相手が何を求めているのか、求めていないのかがいちばん大事なことであって、自分がしたいことをいちばんにしてはならない。これはお笑いの芸事でもまったく同じです。「俺の笑いがわからないなら、もういい」「わかるお客さんの前にだけ伝わればいい」という考え方で自分を一番にするのは、ある種の押しつけなんですね。でも、お笑いってそういうものではない。自分を二番にして、目の前の相手=お客さんを一番にすれば、「どうすればもっと笑ってもらえるだろう?」ともっともっと考えられるようになるんです。それは支援活動を通じて、逆に僕が教わったことですね。

 

今は自分のコンサートでも「相手が一番、自分が二番」の考え方を常にベースに取り入れています。

 

── 相手を選ばず、どんな相手にも伝わる笑いを探し出す。「コロッケ」という親しみやすい芸名通りに、コロッケさんの芸がなぜ老若男女を笑わせてくれるのかがわかる気がしました。

 

コロッケさん:でも東日本大震災で避難所を訪れたときは、「俺はなんでコロッケって芸名にしちゃったんだろう」と後悔したことがありました。あるときコンビニの前で炊き出しをしたのですが、「コロッケが来た」と聞いて集まってきた人たちがいたんですよ。そのなかに「コロッケが来たの?」と言いながら走ってきた女性がいたので、僕は自分のことだと思ってすごい笑顔で振り向いたら、あからさまにがっかりした顔になったんですね。

 

── 揚げ物のコロッケのほうだと勘違いされた?

 

コロッケさん:そうです。そりゃあコンビニの前で炊き出しをしているから、コロッケと聞いたら揚げ物のほうだと思うのが普通ですよね。ちょっとおもしろかったのが、僕の顔を見てがっかりした女性が、一緒に炊き出しに行ったコージー冨田の顔をまっすぐ見て「メンチカツもないの?」と聞いたんですよ。いや、ネタじゃなくてこれ実話ですからね。でもそんな顔をさせてしまったのがあまりに申し訳なかったので、「コロッケ間違い」以降は毎回必ずコロッケを1000、2000個ほど持参するようになりました。