あれ?っと思ったらワッと客席から歓声が起きた

── ものまねをする側とされる側、どちらにとってもうれしいですね。90年代に美川憲一さんが歌手として再ブレイクしたきっかけもコロッケさんのものまねだったとか。

 

コロッケさん:当時、ものまね番組で僕が美川憲一さんのまねをして歌ったんですね。そしたら1コーラスで終わる予定だったのが本番は2コーラスになって、「あれ?」と思いながら歌い続けたら、客席からワッと歓声が起きて、僕の背後から美川さん本人が登場、逃げ惑う僕…という構図に(笑)。あれは本当に何も聞かされていないサプライズだったんですよ。さらに、ものまねをする僕の隣に美川さんが並んで、僕のものまねをやり返してきたんです。曲が終わった後に司会者の方が「美川さん、どうでした?」と聞いたらひと言、「似てないわよ」とバッサリ。大ウケしました。

 

美川さん自身が後々お話しされていますが、「ここがもう(再起の)勝負どころ、チャンスだわ」と思ったそうなんですね。そのシーンが見事に話題になったおかげで以降も、ものまね芸人とご本人が一緒に番組に出演できるようにもなりましたからね。だから、僕のものまねを芸事として受け止めてくださった歌手の先輩方にはもう一生、頭が上がらないです。その感謝の気持ちを伝えたくて、お歳暮と誕生日にはお花をお送りしています。長い方だともう30年くらいですね。

 

ただ、僕がこう言うとほかの芸人さんから「自分もやらなきゃだめ?」と思われるかもしれませんが、僕の場合はパロディ派として原型をとどめないくらいにひどいものまねをやってきたからですよ(笑)。ちなみにパロディ派として僕の血を継いでいる芸人は、ミラクルひかるとキンタローくらいかなと思っています。

 

 

ものまねタレントとして活躍するコロッケさんですが、芸風の原点は幼少期にありました。貧しい母子家庭で育ち、中学生のころには右耳の聴力を失うコロッケさん。しかしポジティブな母姉の影響で、想像力が開花していったそうです。

 

PROFILE コロッケさん

ころっけ。1960年、熊本県出身。80年、NTV「お笑いスター誕生」でデビュー。300種類超のものまねレパートリーを誇り、ものまねタレントとして芸術文化の振興に貢献したと功績が認められ、2014年に文化庁長官表彰、16年に日本芸能大賞を受賞。芸能活動のかたわら、震災被災地や子ども食堂の支援活動も精力的に行い、12年には防衛省防衛大臣特別感謝状を授与される。

 

取材・文/阿部花恵 写真提供/コロッケ