「坂本冬休み」の芸名を名乗って5年後に、本人と会うと…

── そうした活動を続けるなかで、坂本冬美さんご本人と会う機会があったそうですね。
坂本さん:冬美さんが出演されたテレビ東京の番組に、私も呼んでいただいたんです。本名の「加藤めぐみ」から芸名を「坂本冬休み」に変えて活動して5年くらい経ったときですね。
── 初めて冬美さんにお会いするときはいかがでしたか?
坂本さん:もちろん演歌の大御所ですし、紅白も何十回と出ていらっしゃる方。それはもう緊張しましたし、私の芸名もちょっとふざけてるじゃないですか。どう思われてるんだろうって気にもなったし。
でも、いつか冬美さんにお会いできる日を願って、冬美さんが着ている着物を調べ、冬美さんと同じ着物を作りたくて京都まで行ったんです。その着物を着て冬美さんの楽屋に挨拶に行ったら「えっ?」ってびっくりされて。着物の話をすると私の本気度が伝わったのでしょうか。「どうして私の名前で?」と聞かれたので、今まで老人ホームなどに行って、美空ひばりさんを「曇り空ひばり」、八代亜紀さんを「むしろ亜紀」、越路吹雪さんを「越路猛吹雪」と、いろいろな名前をつけて歌っていました。どなたのものまねもとても反響がありましたが、なかでも、坂本冬美さんのものまねをしているときが特にみなさんが喜んでくださったと。私は冬美さんが大好きでしたし、名前をひとつにしようと思って、あるとき「坂本冬休み」という名前が降ってきたと伝えました。
冬美さんは、私が病院や施設にボランティアで行っていることを噂で耳にしていたようで「いつも、ものまねしてくれてありがとう」と言ってくださったんです。私が「いろいろな被災地にも足を運ばせてもらっています」と伝えると「ありがとう」って涙ぐんでくださって。冬美さんが「私も現地に行きたいけど、やっぱりね、なかなか行けなくて。でも私が行けないぶん、よかったらこれ着てちょうだい」と言って冬美さんの着物をくれたんですよ。冬美さん、やっぱりすごい人だな!と思いました。その後も、何度か着物をいただいて、今は合計11着になります。すべて大事にしています。
── 冬美さんの家にも行かれたことがあるそうですね。
坂本さん:はい。千葉の銚子に野菜を作る会があって、イベントに呼んでもらったことがあったんです。後日、「坂本さんをまねた、坂本冬休みという芸名のおかげで野菜をもらいましたが、冬美さんもめしあがりますか?」と冬美さんにメールをしたら「欲しいわ」とおっしゃってくださって。ご自宅に一度お邪魔しました。もう冬美さんにはすべてリスペクトしていますね。
今は、「坂本冬休み」という名前で活動をしていますが、これからももっともっと冬美さんの魅力を伝えていきたいですし、東日本大震災をはじめ、各地で起こっている震災に対しても、まだまだボランティアの活動はずっと続けていきたいと思っています。
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現在はものまね芸人として活躍をする坂本冬休みさんですが、デビュー前は結婚式場で営業トップのプランナーとして働いていたことがありました。しかし多忙やストレスで、4、5年は寝たきりに近い日々を過ごしていたそう。現在はこうした経験を講演会で話す機会も増えているそうです。
PROFILE 坂本冬休みさん
さかもと・ふゆやすみ。1971年生まれ、千葉県出身。坂本冬美さん公認のものまねタレントとして、各イベント、ホテルディナーショー、企業様周年祝い、お祭り、交通安全イベントなど全国各地で大活躍中。
取材・文/松永怜 写真提供/坂本冬休み