「移植の実態を広めたい」手術後に記者会見を開く
── 入院や手術はご夫婦一緒にされたのでしょうか?
小錦さん:夫は11月20日に入院して、私は手術2日前の12月2日に入院しています。「同じ部屋にできませんか?」と聞いたら、「いいですよ」と言われて。夫婦で同じ部屋にしてもらいました。術後も心配だったので、ずっと同じ空間にいられるのは安心できて、よかったです。
手術当日は、朝9時に手術室に入りました。実際の手術は夫婦別々の部屋で行われるのですが、同じ時間に手術室に入るんです。まず私の手術が先に始まって、お腹に穴を3つ開けて、腹腔鏡下腎摘出術で腎臓を取り出していきました。私が手術室にいたのは3時間くらいだったと思います。次に、摘出した腎臓を夫に移植していきました。移植は6時間くらいかかったようです。やはり身体が大きいので、ふつうの人よりもいろいろと時間がかかるようです。
── 千絵さん自身、術後の経過はいかがでしたか?
小錦さん:お腹に穴を開けているので、ちょっと痛みはありました。でも、手術後は「すぐ動いてください」と言われ、実際に翌日から歩かされました。食事も翌日からふつうに食べましたね。腎臓なので食べることに関しては、まったく制限がありませんでしたし、術後1週間ほどで退院できました。
夫の入院はもう少し長くて、12月23日に退院しました。最初は傷がかなり痛んだようですけど、順調に回復していて、いまは痛み止めも飲まなくなりました。手術前はかなり調子が悪くなっていて、ご飯を食べても味がしない状態だったようで、食欲がだいぶ落ちていたんです。でも、いまはそれが改善されて、おいしく食べられるようになったので、手術をして本当にやってよかったです。

── 退院後、夫婦そろって記者会見を開き、大きな反響を呼びました。
小錦さん:記者会見は夫の希望でした。というのも、日本では腎臓が悪化すると人工透析をする人が多く、腎臓移植はほとんど知られていません。でも、人工透析は定期的に通うため行動も制限されてしまう。だから「移植をもっと広めたい」という本人の意思がありました。透析で苦しんでいる人たちが、移植によってふつうの生活に戻れると。家族から腎臓を提供してもらうこともできるし、実際に提供した妻も提供を受けた自分も、こうして元気にしています、というのを知ってもらいたい気持ちが強くあったみたいです。「腎臓移植アンバサダーだ」なんて、自分で意気込んでいるんですよ(笑)。
ただ、その記者会見で私の母が移植を知ってしまって。直接、伝えるつもりだったのですが…。でも、母に連絡したら「(腎臓移植を)やるってわかってたよ。千絵ならきっとやるだろうなって、思ってたよ」なんて言っていましたね。だったら最初から反対しないでよって感じですけど。私としては、母のことを考えると苦しかったし、すごくつらかったので。
── KONISHIKIさんからはどんな言葉が?
小錦さん:「ありがとう」と言ってもらいました。夫の誕生日は12月31日なんですが、私は夫に腎臓をあげちゃったので、クリスマスも誕生日も全部ひっくるめて、「今回は何もあげられないよ!」って言っています(笑)。
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夫婦間での腎臓移植手術を行った小錦夫妻の絆は、ますます大きなものになりました。そんな夫妻の出会いはある治療院。しかも軽口に「結婚しよう!」の会話から、ふたりの関係は始まったそうです。そんなふたりは先日、めでたく結婚生活21周年を迎えたそうです。
PROFILE 小錦千絵さん
こにしき・ちえ。1月7日生まれ 東京都台東区出身舞台芸術学院 ミュージカル科卒業。KONISHIKIの妻であり、会社の代表でもある。シンガー、フラダンサーとしても活動。現在はハワイアンライブ、イベント出演、KONISHIKI BBQイベント開催、CM・TV出演、フラワークショップを不定期にて開催している。
取材・文/小野寺悦子 写真提供/KP