大きな決断をするとき、頼りになるのは同じ決断を経験した人からのアドバイスということはあるでしょう。小錦夫妻が「パートナー間の腎臓移植手術」に踏みきれたのは、元横綱・武蔵丸夫婦の存在でした。(全4回中の2回)
腎臓移植の先輩・武蔵丸夫婦の話を聞いて
── 元力士でタレント・KONISHIKIの妻であり、シンガー・ダンサーとしても活躍する小錦千絵さん。昨年末、KONISHIKIさんにご自身の腎臓を移植されました。移植決断にはかなりの勇気が必要だったのでは?

小錦さん:移植の決断ができたのは、元横綱・武蔵丸関と奥さまの存在が大きかったです。武蔵丸関も何年か前に奥さまの腎臓を移植していて。奥さまが私の悩みをたくさん聞いて、励ましてくれました。何より心強かったのが「私もやっぱり不安があったし、母親が反対していたけど、『移植してもドナーは全然、大丈夫だよ』ってお医者さんに聞いていたから。移植から何年も経つけど、いま私も武蔵丸関も元気でしょ?」と、奥さまに言われたことでした。腎臓提供した経験者が元気にしている姿を目の前で見て、「絶対にやったほうがいいよ!」と背中を押してくれたのが、移植の決め手ですね。
── 移植となると「ドナーの適合」など、いろいろハードルが高そうですが…。
小錦さん:まず、夫と私の腎臓が合うかマッチングを調べる形で、検査が始まりました。とはいえ、腎臓に関してはマッチングの確率は意外と高いそうです。健康であることが大前提ですが、血液型が違っても大丈夫だったり。ただ、細かく調べていくので、やっぱり時間はかかってしまう。当初は一昨年の9月に移植を考えていたのですが、タイミングが合わずいったん保留になりました。
けれど昨年夏、仕事でアメリカに行ったときに彼の具合がかなり悪くなってしまって。現地のお医者さんに「これはもう命にかかわる」と言われ、改めて移植を真剣に考えるようになりました。

そんななか、今度は私の母が脳梗塞で倒れてしまって。母は娘の腎臓を移植することに抵抗があり、手術にもずっと反対していたんです。だから、母の心境を考えると、私も葛藤がありました。最終的に、これ以上心配をかけたくないと思い、母に内緒で手術をしようと決めました。