「福祉だから」ではなく買ってもらえる雑貨を

輪島貫太・輪島楓のオリジナル雑貨
ハンドメイドで作ったオリジナル雑貨たち

── 兄妹の好きなことを伸ばし、作品が商品化されるまでになったのは、どういった経緯があったのですか?

 

輪島さん:将来のことを考えて見学した福祉作業所の状況に疑問を感じたというのが原点です。とある作業所では、通所している方がきれいな布製品を作っていました。完成した製品は家族が買うか、箱の中に片づけられていました。じゃあ、なぜ制作活動織物をしているのか、外で売る仕組みはないのか、ということに疑問を感じました。

 

市役所で福祉バザーをやっているのを見ても、作業所でつくった陶器が100円、200円で売られている。せっかく手づくりの素敵な作品なのだから「福祉だから」「障がい者が作っているから」じゃなくて、一般雑貨としてきれいにラッピングして売り出せば、もっと正当な価格をつけられるんじゃないのかな、と思っていました。ちょうど世の中、ハンドメイドやクラフトブームが始まったころだったので、時代にもマッチしているんじゃないかと。だったら子どもたちの作品を生かした雑貨を自分で作って、イベントなどで販売してみよう!と決めました。

 

── 小売りやデザインの仕事をされていた経験などあるのですか?

 

輪島さん:私と夫はアパレルの販売員経験があり、ファッションや雑貨を見たり、ディスプレイを考えたりするのは好きでした。ただ、デザインや裁縫はまったくの初心者。ミシンを手回ししながらポーチやバッグを縫うところから試行錯誤しました。最初は、子どもの描いた絵をどうやって布に写すのかすらわからず、窓ガラスにイラストを貼って布を重ね、後ろから懐中電灯で照らして必死に書き写すなどしていました。そのうち「トレース台」の存在に気がつき、なんだ、こんな便利なものが売っているじゃないか!と(笑)。シルクスクリーンのやり方を習って、手ぬぐいを作ることを始めました。

 

── 実際にお子さんの作品をモチーフにした商品として売るようになったのはいつごろですか?

 

輪島さん:貫太が10歳、楓が8歳のころです。最初は商店街の夏祭りで販売しました。手ぬぐい、コースター、バッグなどをつくり、出店するためにテントやテーブルを用意して、屋号やロゴを考えて商品ラベルを作り…と、お店屋さんごっこの気分で楽しく準備できました。

 

── お客さんの反応はいかがでしたか?

 

輪島さん:もの珍しさもあって「かわいいね」と興味を持ってくださった方は多かったです。反省点は、うまく値段をつけられなかったこと。「福祉だから」という販売方法に疑問を持って始めたことなのに、いざ自分が売る側になると「子どもの絵だし、手づくりだし」と弱気になってしまって、ポーチもバッグも1000円以上の価格はつけることができず、まったく採算が合わなくて大赤字でした。