「障がいがない子の悩みなんて…」

── 周囲には、自閉症や発達障がいのお子さんがほかにいましたか?
輪島さん:貫太が通っていた幼稚園は、障がいがある子やさまざまな個性がある子を受け入れている園だったので、周囲にいないことはありませんでした。でも、たまたま同学年には、知的障がいがある自閉症児はうちの子だけ。ほかの子は、発達障がいがあるといっても会話ができていたし、オムツも取れていた。でも貫太は、会話が成立しないしオムツも取れていない。その違いを見るのがしんどくて孤独でした。
── では、ほかの保護者の方とは関わることはなかったのですか?
輪島さん:幼稚園には、障がいがある子の親が集まる月1回のお話会があり、そこで会うお母さんたちとだけ会話していました。それ以外のお母さんとは何を話していいかもわかりませんでした。そもそも、貫太はしゃべることができないから、先生の名前やお友達の名前を言わないし、わからない。お迎えのときに会っても、子どもがどこかへ行ってしまうからゆっくり話すことなんてできないですし…。「障がいがない子のお母さんたちの悩みなんて、私とはレベルが全然違うから、わかり合うことなんてできない」と自分から壁を作っていたと思います。
障がい児の親の会のなかでも、私の中では知的障がいがあるかどうか、しゃべれるかどうかで親の悩みは違うから、と分けているところがありました。転んだときに「痛い」とも言えずにただ泣いている子と、どうしたら意思疎通できるのか、という自分の悩みと比べると、お友達とケンカしちゃって人間関係どうしよう、という悩みはずいぶん贅沢に感じたんです。