「関係ないのになんで参加してるの?」

──「発達障がい」と、ひとくくりにはできないですよね。
輪島さん:でも貫太が年中のころに「発達障がいについて知ろう」というセミナーが幼稚園で開かれたのをきっかけに、それまで壁をつくっていた保護者との関わり方が変わりました。そのセミナーに、障がいがない子のママも参加しているのを見て「関係ないのになんで参加してるの?」と思ってしまって、そのまま疑問をぶつけたんです。あとで仲良くなってからそのママには「あのときは感じが悪かった」と言われましたけど(笑)。そのママの答えは「この幼稚園には障がいがある子が何人か通っているけれど、障がいについて話を聞いていいのかわからない。わかったとして自分たちには何ができるんだろう、とずっと思っていたから参加した」と。そこで初めて自分が何に困っているか、自閉症の子にはどんな特徴があって、どうやって関わってほしいかを話すことができたんです。
話すうちに、自分はいかに子どもが自閉症児であることにとらわれていたか気がつきました。水遊びが好きなのは自閉症児だからだと思っていたけれど、ほかの子だってみんな水遊びが大好きだったし、長靴に水を入れちゃうのも一緒。「自閉症だから」じゃなくて「子どもだから」やっていたことに気づいてハッとしたんです。それ以降、私の見方が変わって、貫太や楓の子どもらしい部分が増えたような気がしました。障がいに関しては大人が壁をつくっていただけで、子ども同士はただ単に貫太を「しゃべらない子」と捉えていたんだと思います。幼稚園でほかの保護者やお子さんと関われるようになった経験から、小学校は地元の普通学級に通いました。
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幼稚園での体験を通し、知的障がいを伴う自閉症の兄妹の見方が変わったという満貴子さん。ちょうどこのころから、貫太さんは絵に、楓さんは切り絵に夢中になっていきます。それが後々、オニツカタイガーをはじめ、有名企業とのコラボも実現させる兄妹アーティスト「KANTA&KAEDE」の始まりでした。
PROFILE 輪島満貴子さん
わじま・まきこ。1980年富山県生まれ。石川県金沢市で、それぞれ知的障がいを伴う自閉症の長男・貫太さん、長女・楓さんを育てている。イラストと切り絵が得意な子どもたちが日々つくり出す作品を何か形にできないかと考え、2016年から独学でものづくりを始める。SNSで作品や雑貨の写真を発信し続けるうち、企業から声がかかりコラボ商品に作品が採用されるように。現在、兄妹アーティスト「KANTA&KAEDE」の今後のサポート方法を模索中。輪島貫太&楓・母 著の著書として『みんなしあわせ。 兄妹アーティストKANTA&KAEDE』(東京新聞)がある。
取材・文/富田夏子 写真提供/輪島満貴子