うまくいかない原因を全部人のせいにしていた

── 15年に離婚されましたが、離婚から約10年経って鈴木さんのなかで気持ちの変化はありましたか?
鈴木さん:彼に対して申し訳なかったという気持ちがありますし、母との関係も、離婚の原因も、お仕事がうまくいかなかったことも、全部自分に原因があったと思います。
── なぜそう思いますか?
鈴木さん:コロナ禍の約3年間、お仕事が全部止まって。外出にも制限がかかって、家にこもる時間が長くなったときに、否応なしに自分を見つめ直す時間ができました。これまでうまくいかなった関係や物事に対して、徹底的に向き合っていったんです。
そうするとある日、「母との関係も、元夫とも、こじらせているのは全部自分じゃないか」と、自分の頭の中で符合する日があったんです。うまくいかない理由を全部人のせいにしていないか。自分自身と向き合うことをせず、自分の憤りや心の声を無視しているから、幸せから遠かったんじゃないかと。なぜ、急に腹落ちしたのかは分かりませんが、当たり前のことなのに、かなり衝撃的な気づきでした。
17年に起きた、いわゆる土下座騒動(鈴木さんが主演と初めて舞台を演出した作品で、途中で俳優2人が降板)もそうですね。実際、土下座はさせていませんが、相手に対して傲慢でしたし、思いやりに欠けていました。なぜそうなってしまったのか。とことん自分と向き合ってみたら、原因は自分にあると。そう気づくまで、ずいぶんと時間がかかりました。
その後、自分で自分を労わるようになっていくと、自然と自分のことも愛せるようになって。そうなると、周りともうまくいくことが増えていき、母との関係も心地よいものになっていったように思います。「自分が変われば周りも変わる」。母とも、驚くほどいさかいが減りました。
── ご自身を見つめ直した時間は大きいですね。
鈴木さん:コロナ禍はもちろん大変な時期でした。でも、自分を内省する大事な時間になったのと、人とのつき合い方にも大きな変化を遂げた期間でもありました。
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自分のあり方を見直す中で、体の違和感にも気づくことになる鈴木さん。子宮筋腫に加えて更年期症状もではじめ、50歳で手術を決断。体もすっかり回復し、現在は心身ともに充実した50代を迎えられているそうです。
PROFILE 鈴木砂羽さん
すずき・さわ。1972年生まれ。静岡県出身。94年、映画『愛の新世界』で主演デビューし、ブルーリボン賞など各新人賞を多数受賞。テレビ朝日の人気ドラマ『相棒』シリーズに出演するなど、ドラマ、映画、バラエティーほか、幅広く活躍中。
取材・文/松永怜 写真提供/鈴木砂羽