アプリで十分な時代にテレビで気象予報する価値とは

── 天気予報の担当をする以前は、東映のスーパー戦隊シリーズ「炎神戦隊ゴーオンジャー」のゴーオンブルー・香坂連役を皮切りに、役者としてキャリアを積んできました。天気予報コーナーには、役者の経験も役立っていますか?

 

片岡さん:発声や立ち振る舞い、恥ずかしさをいっさい感じない精神など、役者の経験はいきています。そして、カメラの前でどのようにふるまうか、どうすれば視聴者に届きやすいかを毎回工夫しています。僕の肌感覚ですが、天気予報コーナーは「ながら見」が多く、座って集中して見る人は少ないと思います。さらに、今は天気予報アプリが進化しており、決まった情報しか出さないテレビの天気予報は需要が減っていく気がしています。だから「どうすれば見てもらえるか」は大きな課題です。

 

テレビの天気予報の価値は?たとえば、本当に鮮度の高い情報や、災害時などの深堀りではないでしょうか。でも、ふだんから見てもらいたいし、そのためにはどうすればいいか。突き詰めると「人はどんなときに注目するか」という問いになります。僕の答えは「この人は何をするのだろう?」「何を言うのだろう?」というワクワクする状況です。ストレッチもそうですが、弾き語り天気予報がそんな存在になればと思います。

 

── それで、視聴者をクスッと笑わせたり、熱く語るときもあるのですね。有働キャスターとのやりとりでは数々の金言が生まれています。昨年末の「今年つまずいてしまった方に拍手を贈りたいです」「なぜなら、つまずいてしまったのは、前に進もうとしていたからですよね!」には、心を動かされました。

 

片岡さん:視聴者に楽しんでもらおうと200%の元気でやると、つい熱くなるんです(笑)。暗いニュースも含めさまざまなニュースがあるなかでも、天気予報コーナーは独立しているので僕のやり方次第なところがあります。『有働Times』のテーマが「おもてなし」なので、毎回、視聴者をどんなふうに「おもてなし」しようか考えており、何か響けばいいなと思います。

 

 

ピアノの弾き語りという前代未聞の天気予報で話題を集めた片岡信和さん。じつは大学時代から役者の道を目指し、在学中に戦隊ヒーロー「炎神戦隊ゴーオンジャー」ゴーオンブルー・香坂連役にも抜擢された俳優です。現場で学んだ心がけがいまの仕事につながっていると、当時を振り返って明かしてくれました。

 

PROFILE 片岡信和さん

かたおか・しんわ。中央大学卒業後、2006年に芸能界入り。「炎神戦隊ゴーオンジャー」(テレビ朝日系)で本格的に俳優デビュー。 ドラマ、映画、舞台、ラジオパーソナリティーなど多方面で活躍。 2019年に気象予報士試験に合格し、 2020 年の春よりテレビ朝日系 「羽鳥慎一モーニングショー」の天気コーナーを担当。『かたおか気象予報士の毎朝10 秒! 楽しく「お天気ストレッチ」』(幻冬舎) 出版。2024年10月より、テレビ朝日系「有働Times」でピアノ弾き語り天気予報を行っている。2025年5月よりNHK総合夜ドラ「ワタシってサバサバしてるから 2」に神谷聡介役で出演。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/片岡信和、株式会社MYS