宿泊業の経験者はひとりもいなかったけれど

── 旅館のオープンに先立ち、昨年12月には、旅館の1階スペースにあるカフェをオープンされました。当日はマルシェも開催し、大盛況だったそうですね。
スザンヌさん:12月21日にオープンしたのですが、当日は、河内のお祭りのようなイベントにしたくて、マルシェを開催。子どもたちにも楽しんでもらえるように出張動物園を呼んだり、屋台も出店し、1500人のお客さんが来てくださったんです。雨の予報だったのですが、なんと虹まで出て。元オーナーの久家さんには「自分が守って来た大切な場所が、ふたたび命を宿し、たくさんの人に愛される場所になっていくのがうれしくてたまらない」と言っていただき、本当にうれしかったですね。
── 2月には宿泊施設もスタート。ますます忙しくなりますね。
スザンヌさん:宿泊業の経験者がひとりもいないなかでのスタートだったので、たくさん訓練をし、連日みんなで話し合ってブラッシュアップしてきました。料金は1泊2名6万6000円からと、決してリーズナブルではありませんが、食事はもちろん、インテリアからアメニティまで、来てくださる方の笑顔を想像しながら、こだわりを詰め込みました。特に、食事に力を入れていて、地元の高級食材をふんだんに使っています。お部屋も館内に2部屋だけなので、温泉も貸切状態ですし、行き届いたサービスでゆっくりとくつろいでいただけるのではないかなと思っています。
── 「KAWACHI BASE―龍栄荘―」の旅館再生は、地域の活性化にもつながりそうですね。
スザンヌさん:河内町はもともと温泉街で、すごく温泉がいいのに、今は日帰り温泉がひとつあるだけ。すごく魅力的な場所なのに人口もどんどん減ってきているし、私自身も熊本に住んでいながら今まで全然知らなかったんですね。これを機に、再び温泉街として復活させたいという思いを込めて始めたプロジェクトでもあります。
実は、全国にもこういう場所はたくさんあると思うんです。地域復興のプロジェクトがもっと活性化してほしいですし、「KAWACHI BASE―龍栄荘―」を成功させることで、全国に同じような活動をする方が増えればいいなという思いで頑張っています。
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多額の資産を投じながらも、無事に旅館をオープンしたスザンヌさん。私生活ではシングルマザーとして11歳の息子を育てる母でもあります。小さいころは「西日本一のマザコン」と言われていたほど甘えん坊だったそうですが、今回の旅館開業に奔走する母の背中を見て「ママは夜遅くまで仕事を頑張っていて偉い」とメディアの人に話してくれたことがうれしかったと明かします。
PROFILE スザンヌさん
すざんぬ。1986年、熊本県出身。高校生の時に芸能活動を開始し、2006年に上京。『クイズ!ヘキサゴンII』への出演をきっかけに、おバカタレントとしてブレイクし、多方面で活躍。2014年に第一子を出産。15年に離婚を経て、熊本県に移住。2023年にファションブランドを起ち上げ、株式会社yamaの代表取締役社長に就任。2024年12月から、「KAWACHI BASE-龍栄荘-」をオープン。
取材・文/西尾英子 写真提供/スザンヌ