先輩のひと言で決意「正統派のお笑いでなくても」
── 現在は「すゑひろがりずといえば狂言風漫才」というオリジナリティを確立していますが、この芸風を確立したのはどんな経緯があったのですか?
南條さん:たくさんの芸人が1分くらいのショートコントを次々披露していくネタライブがありました。僕たちもいろんなネタに挑戦しましたが、そのときに狂言風のネタに挑戦してみたんです。そうしたら、これがものすごくウケた。
三島さん:南條の「狂言師の声まね」がめちゃくちゃうまかったんです。最初に聞いたときに「これめっちゃおもろいね」となりました。実際、ステージでもそれまででいちばんウケました。

とはいえ、そのときはまだ狂言風漫才に舵を切るつもりはなかったんです。狂言ネタってかなりの変化球じゃないですか。やっぱり正統派で勝負するべきでは?という気持ちがあって。でも、他のことをしてもやっぱりウケない。かといって、狂言一本にするのは…と、腹を括れずにいました。
南條さん:そんなとき、ミルクボーイの駒場さんとライブが一緒になり、狂言ネタを見てもらったんです。すると「めっちゃおもしろいやん。それネタにしたら?」と言ってもらえて。おもしろい先輩がそう言ってくれるんだったら、と挑戦してみたら、オーディションにも受かるし、どんどん出番をもらえるようになっていきました。やっぱり一緒に切磋琢磨している先輩のアドバイスは大きかったですね。そこから徹底的に狂言風にしていこうとなり、現在のスタイルを確立するようになりました。
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王道漫才を捨て、狂言風一本で勝負に挑むことを決めたすゑひろがりず。さっそく小鼓をネットショップで購入しますが、これが思いのほか難しく、当初は音が鳴らずにネタがスベることもあったそうです。
PROFILE すゑひろがりず
お笑いコンビ。2011年、NSC大阪校28期生の南條庄助と三島達矢がコンビを結成。日本の伝統芸能である狂言の要素を取り入れた「狂言風漫才」が注目を集める。2014年、キングオブコント準決勝進出。2019年、M-1グランプリ2019決勝進出。2020年には南條庄助がR-1ぐらんぷり第3位を獲得。2022年、第七回上方漫才協会大賞で大賞受賞。
取材・文/齋田多恵 写真提供/南條 庄助、三島 達矢