養子縁組にて赤ちゃんの委託を決めた久保田智子さん。病院では産みの母やその親御さんと対面も果たします。時間にしてわずか数十分の出来事でしたが、今でも心に残っていると言います。(全4回中の3回)

産みの母と病院で対面すると

久保田智子と娘
3歳になった娘と北海道へ

── 養子縁組の斡旋団体の研修と登録を終えて、約1か月後には赤ちゃんを委託されたとのこと。初めて赤ちゃんと対面してどう思いましたか?

 

久保田さん:赤ちゃんと対面する前に斡旋団体の相談員の方から写真を送ってもらって見ていましたが、実際に対面すると、本当に小さくてかわいいなと思いました。相談員の方から「ママ」って言われて、「私、ママなんだ…」って、思いながらぎこちなく抱っこをして。

 

本来は赤ちゃんを迎えた直後に新生児育児についての研修をしてくれるんです。ただ、夫が仕事の都合で研修にすぐに入れなかったので、その間、いったん別の病院に移動して娘をみてくださることになりました。次の病院までタクシーで30分くらい乗って移動しましたが、その間ずっと赤ちゃんを抱っこしていて、もう腕が緊張しちゃってカチカチで。揺らしちゃいけない。大事に抱えなきゃって不自然な抱え方をしていたのか、次の日は腕が筋肉痛でした。

 

── 旦那さんが娘さんと初めて対面された姿はいかがでしたか?

 

久保田さん:夫が初めて抱っこしたときに娘が笑ったんですよ。新生児だからなんらかの反応で笑って見えているのが正確かもしれないですけど、抱っこしたら「ニマァ」って笑ったんですね。私たちのもとにきてうれしいと思ってるのかなって、自分たちなりに受け止めたんですけどね。

 

── 赤ちゃんの産みの親の方とも病院でお話しされたそうですね。斡旋団体の方針でしょうか。

 

久保田さん:各斡旋団体の方針によって産みの親と会う・会わないの違いはあるようですが、私たちは相談員の方から会うことを勧められました。もちろん相手も会いたいと思っていることが前提です。私はお会いできてすごくよかったです。この先ことあるごとにその情景を思い出しますし、娘にも伝えられます。産みの親への感謝の思いも、とてもリアルに持てるんですよね。

 

── 産みの親の方とは、スムーズにお話しできましたか?

 

久保田さん:実際会って話をして、私の娘を産んでくれた人はこういう人で、こんな話し方をして、こんなふうに思ってここまできたんだな、ということが聞けたのは大きかったですね。数十分の時間でしたが心からそう思いました。その後、元気にしているかも気になりますし、娘のこういうところは産みの母に似ているのかなとか、そう感じられることも素敵だと思うんですね。

 

反省としては、もっともっといろんな話をしておけばよかったと思います。あらかじめどんなことを話すか考えたものの実際、会ってみたら頭が真っ白になってしまって。