想像以上に大変だった教育実習

つるの剛士
東京未来大学通信教育課程にて勉強していたころ

── 特に印象的だった出来事はありますか?

 

つるのさん:やっぱり教育実習かな。想像していた以上に大変で、5人の子育てをしていた自分がまったく手に負えないことだらけでした。最初のころ、子どもたちがワーッと一斉に泣き出して焦っていたら、先生がやってきて、ちゃちゃっとおまじないをかけるかのように一瞬でなぐさめるんです。まるで、子どもたちの心の中にスッと入って、傷跡にそっとばんそうこうを貼るみたいに。先生が一瞬魔法使いに見えて感動しましたね。でも、実習の最後のころになると、気づくと自分でもそれができるようになっていて、成長できたんだなとうれしかったですね。

 

実習中は日誌を書くのですがそれも大変で。1か月間、徹夜で取り組んでいました。子どもたちと一緒に撮った写真は、今でも机に飾っていて、もらった手紙も全部大切に保管しています。僕の宝物ですね。

 

子どもたちと過ごすことで、いろんな発見がありました。あるとき、校庭で落ち葉の掃除をしていたら先生がやってきて、「お掃除、ありがとうございます。でも、やらなくて大丈夫ですよ。これは子どもたちのおもちゃなんです」と。なるほど、落ち葉も彼らにとっては季節を感じられる大事な遊び道具なんだなと、目からうろこが落ちました。以来、道に落ちている松ぼっくりや、これまで捨てていた牛乳パックも、全部遊び道具に見えてきて、「身の回りのものをちょっと工夫することで、何でもおもちゃになるんだな」と。

 

── 大人の目線だと見過ごすようなものでも、子どもの世界では価値ある宝物だと。発想が柔軟になりますね。

 

つるのさん:子どもは自然体だから、ありのままでぶつかってきます。何が起こるかわからない。それに忖度もしないし、考え方がシンプルだから、子どもたちと過ごしていると、「難しいことを考えても仕方ないな」と思えてくるんです。いろんな気づきを与えてくれるから、僕にとっては、子どもたちが「先生」のようなもの。クリエイティブな発想を持つ彼らに学ばせてもらっているという感覚で日々向き合っていますね。

 

── 短大卒業後は、大学に編入し、心理学を学ばれているそうですね。

 

つるのさん:人生でこれほど勉強したことがなかったので、保育士の資格を取得した後、目標がなくなって、燃え尽き症候群みたいになっちゃって。せっかく学びの習慣も身についたので、どうせなら興味のある心理学をもっと勉強してみたいなと思い、通っていた短大と提携していた大学の子ども心理学部に編入しました。今、4年生なのですが、3月で卒業するので、この春からまた別の大学で学ぶつもりでいます。

 

── 学びを止めない姿勢が素晴らしいですね。

 

つるのさん:まさか、おバカタレントと言われていた自分が、こんなに学ぶことを楽しんでいるだなんて想像もしていませんでしたね。つくづく人生っておもしろいなと思うし、変えられないことなんてないんだなと感じます。

 

PROFILE つるの剛士さん

つるの・たけし。1975年、福岡県生まれ。神奈川県藤沢市在住。「ウルトラマンダイナ」(TBS系)でアスカ隊員役を演じ、2008年には「クイズ!ヘキサゴンII」(フジテレビ系)で「羞恥心」を結成し、人気を博す。2022年春、短大を卒業し、幼稚園教諭2種免許、保育士資格を取得。プライベートでは、二男三女のパパ。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/つるの剛士