勉強しなさいなんて、どの口が言うんだ
── 塾に?つるのさんがですか…?
つるのさん:そうなんです(笑)。長男が中学受験のときに、まったく勉強をしなかったので、つい「勉強しなさい」と口うるさく言っていたのですが、なんだか違和感がありました。だって、僕自身、『クイズ!ヘキサゴン』であんな珍回答をしていたおバカタレントなのに(笑)、子どもに偉そうに「勉強しなさい」なんて、「いったいどの口が言うんだ」と笑えてきて。まったく説得力がないですよね。
「勉強しなさい」と言っている当の自分が、何で勉強をしなきゃいけないのかよくわかっていない。じゃあ、いったい勉強ってどんなものなのか、体験してみようと思って、息子に「お前は塾をやめていい。代わりにパパが入るから」と。いざ塾で勉強を始めてみたら、知る喜び、学びの楽しさに目覚めてスイッチが入り、新しい世界が開けました。
── 子どもに勉強の大切さを説明できないから自分が塾に入る…。柔軟で大胆な発想ですが、すごくつるのさんらしい気がします。
つるのさん:最初は先生たちも、「え、なぜパパが来たんですか?」とビックリされていましたけれど、「学び直しというか、『学び始め』をしたいんですけど…」と伝えて入塾しました。そこは個別学習の塾だったのですが、実際に塾に行って先生に教わることもできるし、家でオンライン学習もできるシステムなんです。もともと息子に「勉強しなさい」と説得力をもって伝えるために入ったつもりでしたが、実際に40代の自分でもこうして学べる環境が整っているなら、本当にやりたくなったときに勉強すればいいじゃないかと思うようになって。逆に子どもに「勉強しろ」とは言わなくなりましたね。きっと息子は息子で、子どもながらにいろんなことを考えて、今やるべきことに向き合っているのだろうだろうし、「まあいいか」と寛容になりました。
── 実際、つるのさんが勉強に打ち込む姿を見て、お子さんたちはどんな反応を?
つるのさん:子どもたちの刺激にはなったかもしれないですね。僕がリビングのテーブルで勉強に熱中している姿に触発されたのか、子どもたちが自然とリビングのテーブルに集まってきて勉強をするようになったんです。みんなで並んで一斉に教科書を広げている姿を見て、奥さんがおもしろがって写真を撮っていました。子どもたちも前より勉強するようになりましたし、実際に成績も上がったんです。結果的に、口で言うよりも、親が行動し、その姿を見せるのがいちばん効果的なんだなと気づきました。
── お子さんたちのモチベーションが上がったんですね。
つるのさん:別に勉強じゃなくてもいいと思うんです。親がなにかに一生懸命チャレンジしていたり、夢を追いかけている姿を見せることが大切なんだと感じています。
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そんなつるのさんは、保育士の免許の取得を目指し、44歳で短大入学を果たします。さらに4年生大学に編入し、現在大学4年生。今年の春には卒業を迎えます。
PROFILE つるの剛士さん
つるの・たけし。1975年、福岡県生まれ。神奈川県藤沢市在住。「ウルトラマンダイナ」(TBS系)でアスカ隊員役を演じ、2008年には「クイズ!ヘキサゴンII」(フジテレビ系)で「羞恥心」を結成し、人気を博す。2022年春、短大を卒業し、幼稚園教諭2種免許、保育士資格を取得。プライベートでは、二男三女のパパ。
取材・文/西尾英子 写真提供/つるの剛士