『めざましテレビ』のリポーターなど、タレントして活躍していた西田美歩さん。現在は介護福祉士としてリハビリ型デイサービスで働きながら、介護タレントとして活動しています。西田さんが介護の仕事を始めたきっかけは、まさかの「勘違い」からでした。(全4回中の2回)

ジムの仕事応募のつもりが…まさかの結末に

西田美歩
芸能活動に勤しむ西田さん

── リポーターやバラエティなどの芸能活動をするなかで、介護のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

 

西田さん:2017年に結婚したのですが、それと前後して不妊治療をすることにしました。治療中は急に病院に行かなければならないことが多く、仕事のスケジュールを組むのがなかなか難しくて…。それで芸能の仕事を少し抑えることにしたんです。

 

少し時間ができたため、不規則な芸能の仕事とは違い、治療に影響がない範囲で働けるところはないか探していたときに見かけたのが、近所のトレーニングジムのような施設でした。スタッフの方と利用者の方がいつも笑顔で楽しそうに過ごしているのを見かけていたので、こういうところで働いてみたいなと。それで応募したら、そこがジムではなくデイサービスの施設だったんです。

 

── ジムだと思っていたら介護施設だった?

 

西田さん:私が見ていたのは、利用者の方がデイサービスで機能訓練などのトレーニングをしていたところだったようです。想定していた仕事とは異なりましたが、話を聞いてみたらおもしろそうだと思ったので働くことにしました。兄が介護士で身近に感じられたのが、影響したのかもしれません。

 

とはいえ、経験も資格もなかったので、初めは周りの方々のサポートが中心でした。働きながら初任者研修、介護福祉実務者研修、2024年に介護福祉士の資格を取得。不妊治療のため休みをもらうことはありましたが、基本的には週5日、朝から夕方まで働いていたので、勉強と仕事の両立は大変なこともありましたね。今は週3日くらいで勤務しています。

 

── 経験がないと最初は苦労したことが多かったのではないですか?

 

西田さん:30代前半まで芸能界でしか仕事をしたことがなかったので、介護についてはもちろん、言葉遣いや上下関係、電話の対応など、社会人としての基本的なことがまったくできませんでした。介護の仕事を始めてからは、専門用語も覚えなくてはならず、毎日クタクタに。高齢者とコミュニケーションを取ることもそれまでほとんどなかったので、接し方が難しかったです。でも、周りのスタッフが本当にいい人ばかりで、母親のような感じで、手取り足取り、いちから介護の仕事について教えてくれました。

 

訪問介護では暑い日や寒い日、嵐のときも自転車で家を回る必要があって、移動するのもひと苦労。入浴介助は体力的にしんどいと思うこともありました。でも、苦労することはありましたが、それ以上に自分のことを待ってくれている人がいるという喜びが勝りましたね。

「夏になったら白い花が咲くから」と

西田美歩
訪問介護中!想像以上に楽しかった介護の世界

── 介護の仕事は想像以上に楽しかったとか…?

 

西田さん:そうですね。働いてみて、介護の仕事にどんどんハマっていきました。最初はわからないことだらけでしたが、利用者の方と会話が徐々にできるようになり、覚えてもらえて。「西田さんに会いに来たよ」「西田さんに会うとホッとする」などと声をかけてもらえるのが、とてもうれしくて。

 

利用者の方たちは私が今まで知らなかった、花の楽しみ方、地域の歴史、家事のやり方などを教えてくれます。そういうことが、私自身の人生を豊かにしてくれると気づいたのも介護にハマった理由のひとつです。私もいろいろなことを学んでケアできる内容が増えれば、もっと利用者の方に信頼してもらえるのでは、と思うように。それで資格の勉強を始めたんです。

 

── 資格を取ってよかったと感じることも多いですか?

 

西田さん:多いですね。認知症の方の対応をすることも多いのですが、なにも知らないころはどうして怒っているのか、なにが不安なのか、わからないこともありました。でも、病気のことを理解すれば自分の配慮がたりなかったことがわかり、素直に謝ることができます。

 

また、認知症の方はデイサービスに来ても、「家に帰りたい」とおっしゃることがよくあります。それは認知症で起こる症状のことを知ると、そのように利用者の方がおっしゃるのは、無理のないことなんです。じゃあどうしたらそう思わずに過ごしてもらえるのかを考え、勉強したことを実践すると「帰りたい」と言われない日もあって。声がけひとつで変わると実感できると、学ぶことは大切だと感じられますね。

 

── 利用者の方との間に思い出に残るエピソードはありますか?

 

西田さん:私が介護の仕事を始めたばかりのころに接していた、90歳過ぎのおじいちゃんがいました。耳が遠く最初はコミュニケーションをとるのが難しかったのですが、「話しかけてくれてありがとう」とニコニコと言ってくださる優しい方でした。その方を送迎するといつもお庭のお花について教えてくれて、「夏になったら白い花が咲くからいっしょに見ようね」と約束をしていたのですが…。その方はその後、亡くなってしまいました。約束を果たしたくて、夏になってその花を家の前までひとりで見に行ったときには号泣してしまいました。