40歳の節目に新たなチャレンジを

── 今年から新たなスタートをきるそうですね。

 

徳澤さん:病院を退職後は、子育てに専念していたのですが、子どもたちの受験が終わってから、ふと自分を俯瞰して見るような心境になりました。ちょうど40歳という節目もあって、原点であるモデルの仕事と、大学や大学院で学び、看護師・助産師として働いた経験を繋げることで、自分にしかできないようなことにチャレンジしてみたいという気持ちが生まれてきました。

 

医療の仕事については、長女が「夜勤のときに家にいなくて寂しかった」と言っているので、子どもたちの手が離れるまでは当分できないかもしれませんが、今後の選択肢としてはずっと残していたいです。今は自分の原点であるモデル業に加えて、女性の心身の健康について発信することに興味があります。モデルは紙面を通じて夢を与える仕事ですが、さらにみなさんとより良く心豊かに生きていく情報を共有していく活動もしたいと思っています。健康に関する知識も、医療従事者として責任感を持ちながら共有していきたいです。

 

徳澤直子さん
看護師・助産師として働いていた頃の徳澤直子さん

── モデル時代に、体型管理などはどうされていたんですか。

 

徳澤さん:体重を減らすことを常に意識せざるを得ない環境でした。生理も止まってしまって、体に力が入らない状態になることもありましたし、反動で太ることもありました。今はどうかわからないのですが、当時はモデルサイズの細めのサンプルの洋服があって、それを着て美しく見えないと撮影に呼んでもらえないという時代でした。出続けたいならば体重管理が必須だったので、今となれば本当によくなかったと思うのですが、何日もご飯を食べないことがありました。それが進んでいくと、今度は体が食べ物を受けつけなくなりました。太ってしまうという強迫観念から、飴やガム、水以外を口に入れることがダメになってしまって。食べることへの罪悪感に陥っていたと思います。

 

日本人女性の痩せ願望がどのように醸成されていくのかを今一度考えたいですし、若い女の子たちが妊娠や出産を含めた今後のライフデザインをしていくなかで、間違った選択をしてほしくないと思っています。知識があれば正しい選択ができるので、そういったことも伝えていきたいです。

 

── 徳澤さんは10代から仕事をしていましたが、ご自身のお子さんたちにはどんな将来を歩んでほしいですか。

 

徳澤さん:仕事を持つことが人生の豊かさを作るひとつのツールになるということは伝えているので、そのおかげか、私が働くことに対してこころよく送り出してくれています。自分のことがあるので子どもたちが若いうちから何かをしたいと言っても止めることはできませんね。私は、社会人を経験してから学び直しをしていますが、それにも納得しているところがありますし、若いときだからこそできることもあると思います。子どもたちには、常に選択肢は残しつつ柔軟に生きてほしいなと思います。

 

PROFILE 徳澤直子さん

とくざわ・なおこ。ファッション誌『Cancam』専属モデルを卒業後、第1子をアメリカ合衆国ミネソタ州にて出産。 帰国後、育児と並行して大学受験に挑戦。聖路加国際大学を卒業し看護師資格取得、その後同大学院にて修士号及び助産師資格を取得。 大学院在学中に第2子を出産。総合病院にて約3年看護師・助産師として勤務し臨床を経験。今後はモデル、大学院及び臨床、そして育児で得た経験を活かし、マルチな活動を予定している。

 

取材・文/内橋明日香 写真提供/徳澤直子