「片づけ」=「使えるように整えるための手段」
「片づけ」と聞くと「収納」だけに目がいきがちですが、そうなるとその場しのぎの「きれい」しかかないません。本来、片づけの目的は見栄えのためではなく、そこに暮らす人のために行うもの。「使えるように整える」ためのひとつの手段です。
「きれいにする」ことだけに自分のタガをはめてしまうと苦しくなり、ストレスがたまります。でも目先の「きれい」ではなく「使いやすく整える」と単純に捉えると、「きれい」の思考が変わってラクになります。
- 家と物量のバランスが取れている
- 収納とライフスタイル、家がマッチしている
- 収納がきちんと機能している
- 片づけが習慣化されている
- 家族で片づけのルールが共有されている etc
何よりものの「量」「居場所」「配置」「収納の仕方」が家と人、暮らしにマッチしていることが大切です。そのうえで、きれいな状態をゼロ(基本)として、快適に暮らせているかどうか意識してみてください。快適ならゼロの状態がキープできるはず。暮らしは毎日続くものなので、まずは「片づけ=使いやすくなる」ことを体感するのがいちばんです。そうすると「きれいにする」目的も変わっていきます。
- 家事をしやすくするために「きれいにする」
- 無駄な時間をなくすために「きれいにする」
- プライベートの時間を有意義にするために「きれいにする」
- スペースを作りたいから「きれいにする」 etc
きれいに片づけることで暮らしのなかの不具合が解消され、さまざまな手間が省けます。するとものを探す時間がなくなり、家事の効率が格段にアップして「小さな時間」が戻ってきます。
小さな時間がたまれば、好きなことに使える自分時間に。暮らしが整ってぐるぐる回ると、心にもゆとりが生まれます。きちんと機能している片づけは、その場で済ませることができるので、「週末にまとめてやろう」「たまってからやろう」といった、ほかの時間を片づけでつぶすこともなくなります。
「出したら戻す」、ただそれだけ
戻せないのは、しまいにくいなど、面倒に思う原因があるから。そこを解消して「クセづける」=「習慣」にできれば解決です。そして暮らしに合った片づけができると、自然にきれいな状態が保てます。でもそれも、ときどき見直さなければなりません。
なぜならライフスタイルは年を経て変わっていくものだから。その変化に合わせて見直すことも大切です。また、「もっとよくなる」という目を持ち、ときどき新しいものを取り入れながら、「昨日よりもうちょっと」「今日の隙間にもうちょっと」と、アスリートのように少しずつ意識を高めていくと、暮らしの質も上がります。
PROFILE 田中ナオミさん
たなか・なおみ。一級建築士、NPO法人家づくりの会会員、一般社団法人住宅医協会認定住宅医。1963年大阪府生まれ、1965年から高校卒業まで徳島県にて過ごす。女子美術大学短期大学部造形学科卒業後、エヌ建築デザイン事務所、藍設計室を経て、1999年「田中ナオミアトリエ一級建築士事務所」を設立。住み手を笑顔にする住宅を一筋に手がける住宅設計者として活躍。昨年12月に新刊『60歳からの暮らしがラクになる住まいの作り方』を上梓。
取材・文/岩越千帆(smile editors) 撮影/鈴木真貴