ジブリ映画の楽曲『君をのせて』や『となりのトトロ』を歌う歌手・井上あずみさん。昨年8月に40周年コンサートの当日、リハーサル中に脳出血で倒れ、1年にわたる過酷なリハビリを経て、先月ステージに復帰しました。この日を迎えたお気持ちなどを伺いました。(全4回中の4回)

幕が上がらなかった40周年をようやく迎えられた

── 2024年11月16日のイベント「アニソン文化祭2024 みんな集まれ!わたしは元気♪」では総合司会を務められました。この日が実質、手術から1年3か月ぶりの復帰となりましたが、無事に終えられた率直なご感想を教えてください。

 

井上さん:アニメソングを歌う仲間たちや娘で歌手の今尾侑夕(ゆーゆ)に助けられてこの日を迎えることができました。でも、正直に言うと、すごく疲れました。病気になる前は2時間くらいのコンサートは頻繁にやっていたのに、まだまだ本調子ではないことを実感したのは事実です。でも「やっと40周年が迎えられて進みだしたな」と思えました。昨年8月の40周年コンサートの当日、本番直前のリハーサル中に脳出血で倒れてしまい、私のなかで40周年のコンサートは幕が上がらないままで止まっていましたから。

 

司会を務める井上あずみさんと娘の侑夕さん
司会を務める井上あずみさんと娘の侑夕さん

── イベントではジブリ映画の楽曲『となりのトトロ』を歌唱なさったそうですね。

 

井上さん:はい。みなさん大きな拍手と笑顔で見守ってくれ、一緒に歌ってくれてうれしかったです。「あぁ、この感じだ!」って、かつてのコンサートを思い出しましたね。今回、車いすで歌うことになり、座るとどうしても姿勢的に声が出しづらいので、練習をたくさんしました。「立てばもっと声出るのに」と悔しさも少しありましたが、苦しそうに見えないよう、明るく笑顔で歌うことを心がけました。少し音程をはずしてしまったのは残念だったんですけどね。

 

今回出演してくれた仲間たちはとてもあたたかくて…。みなさんがステージでお祝いの言葉をくださって、それを舞台袖で聞いてたんですけど、本当はステージ正面から見たかったです(笑)。洗足学園音楽大学のみなさんも参加してくださって、若いパワーを見ていると、もう未来しかないなって希望をもらいましたね。

 

井上あずみさんと娘の侑夕さん
井上あずみ&侑夕、ミュージカルコースの学生たちと『となりのトトロ』を熱唱

── 映画『となりのトトロ』の曲『さんぽ』も披露されたそうですね。

 

井上さん:『さんぽ』は自分も元気になりたいなという気持ちで歌いました。会場のみなさんも歌ってくれ、それが応援してくれているように聞こえて、胸がいっぱいになりました。まさにリハビリでたくさん歩いて、今の元気な姿をお見せできた自分のことと重なって、もう感激ですよ。今の私のための歌のように聞こえて、この曲に出会えたことに改めて感謝しました。

献身的にサポートしてくれた娘の成長

── この日は娘で歌手の今尾侑夕さんがアシスタントを務められ、親子二人三脚で進行なさったそう。ゆーゆさんは『君をのせて』も披露されたそうですね。

 

井上さん:今回は娘にいっぱい助けてもらいました。途中で何を言っていいかわからなくなると、彼女が進行してくれたので心強かったです。ジブリ映画『天空の城ラピュタ』エンディング挿入歌『君をのせて』を娘が歌ったのですが、堂々と歌う姿を見て「すごいな」って思いましたね。私が歌うと思って来てくださっている人の前で歌うわけですからプレッシャーもありそうなところ、堂々としていて「根性あるな」って(笑)。

 

実は私は緊張しいなんですよ。いつも本番前は過呼吸になるくらい。大きな舞台を想像しただけでもうドキドキしちゃう。だから「どういう心臓なの?すごいうらやましい」って思えるほど。娘のこの曲の歌唱は何度も見ていますが、今回のステージはいちばんよかったです。わが娘ながら「この子すごいな」って思いました。本人にはあのとき何も言わず、褒めたりすることもしませんでしたが、ちゃんと本人を褒めたいですね。