週に2回のデイサービス通いで人生の勉強も
── 現在もまだ麻痺が残る左半身のリハビリを頑張っておられるそうですね。
井上さん:まだ左側に麻痺が残っていて、お風呂やトイレも家族のサポートなしではできず、以前のようには体がまだ動いていませんが、家族の愛のあるスパルタでリハビリを頑張っています。私のサポートで家族が疲労しないように、週に2回デイサービスにも通っているんですよ。そこではダントツに若いメンバーなんですけど、筋トレマシーンを使ったり、人といろいろお話しできたりするのがいいですね。20歳くらい年上の大先輩たちと、大正時代の歌とか童謡とか歌う時間があって、それが私のいい練習になってます。「きれいな声ねぇ」って言われると嬉しいですね。
── 井上さんがお歌いになると、きっとみなさん「この歌声、ただ者ではないな」と思ってらっしゃいそうですね?
井上さん:いやいや、そんなことないですよ(笑)。みなさん私が歌手ということはもちろん知りませんし、みんなと同じように歌って楽しい時間を過ごさせていただいています。人生の先輩たちが多いので、いろんな話が聞けるのも楽しくて。私は芸能レポーターみたいにいろいろお話を聞きに行っているんですよ。そこで人生の勉強もさせてもらっています。誰もが通る道ですからね。
私はみなさんの娘さんくらいの年齢のようで、本当にいろいろお話ししてくれるんです。しかもそんな先輩たちに「体が不自由なのは大変だけど頑張ってね」って言われて、「頑張るよ!」って。私のほうが応援されてるんですよ。
── 今年は昨年の40周年で幕が上がらなかったリベンジを果たされ、来年はデビュー42周年という形で、進化した姿をファンのみなさんも楽しみにしておられるでしょうね。
井上さん:「40周年コンサートでできなかった演目を絶対やりたいです」ってステージで言ったら「みなさんの前で言ったからにはやらないとね!」とスパルタ娘にも言われたので(笑)、達成するべく、これが始まりだと思って頑張ります。今回の復帰のイベントで満足せずに、スタート地点にやっと立てたという思いで頑張っていけたらなと思います。そしてリハビリも、どこかに笑いを入れながら明るく乗りきることが大事だと思っているんです。これからもじたばた生きていきたいと思うのでぜひ応援してください!(笑)
PROFILE 井上あずみさん
いのうえ・あずみ。歌手。石川県金沢市出身。83年にデビュー。86年、スタシオジブリ・宮﨑駿監督作品『天空の城ラピュタ』ED挿入歌『君をのせて』に抜擢。続く『となりのトトロ』では『さんぽ』『となりのトトロ』『おかあさん」『まいご』など、主題歌・イメージソングを数多く歌う。2023年、歌手デビュー40周年コンサート当日に脳出血で倒れ闘病。リハビリを続けながら2024年11月にステージに復帰した。娘は歌手の今尾侑夕。
取材・文/加藤文惠 写真提供/井上あずみ