パリやニューヨーク、海外のショーでも注目を集め

桃果愛さん
ロンドン・ファッションウィークでランウェイを歩く桃果さん

── 昨年からパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークと海外のショーに参加するようになったきっかけは何ですか?

 

桃果さん:以前から海外でも仕事をしたいとずっと思っていて、現地の会社と交渉していましたが、なかなか形にならなかったんです。それが、去年パリ・ファッションウィークのオーディションに合格してランウェイを歩いたところ、一気に扉が開いて毎シーズン海外のショーから声がかかるようになりました。

 

── 華やかな海外のショーの裏側はどうでしたか?

 

桃果さん:海外の現場では時間通りに始まらないことがほとんどで、集合時間に来たのは私だけ、ということもありました。ヘアメイクの意思疎通が難しくて、デザイナーのイメージが現場で共有されていなかったり、髪型やメイクのチェンジがあるのにヘアメイクさんが帰ってしまっていたり…。そういったことはしょっちゅうあります(笑)。かなり適応能力が身につきます。

 

── では、英語は堪能なのですね。 

 

桃果さん:全然!日常会話しかできないです。通訳さんもつけていません。事前に大切な部分は文章でやり取りしておいて、あとは現地で何とかします。相手の言っていることは何となくわかるので、自分の返事は単語とジェスチャー。どうしても必要があれば翻訳機を使います。最初は「一度海外で仕事をしてみたい」ということだけがモチベーションだったので、こんなに続けて海外と関わることになるとは思っておらず。今後を見据えて、今年になってようやく英会話を習い始めました(笑)。

 

── 今後の目標を教えてください。

 

桃果さん:私はショーに出ることも好きですが、裏側でディレクションするのも大好き。昨年のミラノ・ファッションウィークでは、日本のブランドチーム『MOMOKA TOKYO』を立ち上げ、体型、身長、肌の色、障がいなどにとらわれないコレクションを監修しました。ショーに衣装を出すスポンサーに声をかけ、そのスポンサーに合ったテイストのテーマを提案し、テーマに合ったメイクやコーディネート、会場で流す曲を提案し、モデルをキャスティングし、衣装を出す順番やウォーキングの動線を考えて…全部ディレクションしました。来年はニューヨークでも企画・監修に挑戦します。海外で何をどうやって表現したら日本のブランドのよさが伝わるか、考えるのはすごく楽しいです。

 

海外でのショーを経験し、日本から海外にもっと商品をPRしたいファッションブランドや、逆に日本にもっと進出したい海外のファッションデザイナーがたくさんいることを実感していますし、日本に駐在している大使館から何かコラボレーションできないかと話が持ちかけられることもあります。そういった企業や国を結びつけ、日本と海外の架け橋になるのが今の夢です。

 

PROFILE 桃果 愛さん

ももか・あい。1986年大阪府生まれ、熊本県育ち。看護師をしながら日本初の「プラスサイズモデル」活動を開始。2017年にプラスサイズ専門のモデル・タレント事務所『GLAPOCHA』を設立し、モデル・タレントの派遣事業に加えて企業とのコラボ商品開発にも取り組む。現在はジェンダーレスや外国人など多彩な個性のモデルを含め約80名が所属するグローバルモデル・タレントエージェンシー『株式会社W IMPACT』の代表取締役社長。2023年パリ・ファッションウィークへの参加を皮切りに、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのショーに参加。国内、海外問わずに活躍の場を広げている。

 

取材・文/富田夏子 写真提供/桃果 愛