「映画制作とスケート」違いと似ているところ
── 2019年からはじめて、わずか数年で作品が評価を受けるなど、映画プロデューサーとして順調に経験を積んでいるように思えますが、スケーター時代とは異なる環境です。大変だと感じることはありませんか?
村主さん:スケートは個人競技なので、コーチなど関わる人数は限られていました。一方、映画制作は多くの人が関わり、いろんな国からアメリカに来た人たちとチームで作ります。そのため、文化や考え方が異なるメンバーで、短期間に作品を作り上げる大変さはありますね。
ほかにも、作品作りに影響のある要件として、屋外の撮影だと必ず天候に左右されます。役者さんの体調など、不可抗力への対応もありますね。制限のある状況下で期限内に作品を作るのは大変ですが、同時におもしろくもあり、すべて意味のある経験としてポジティブに受けとめてやっています。
── 逆に、スケートと通じる部分は?
村主さん:みんなでひとつの作品を作るという点は、スケートと通じるところがあります。やはり、何かを作り上げていくプロセスが、私は好きなんだと思います。
── 映画制作の裏方に徹していますが、作品に出演したことはありますか?
村主さん:じつは先日、映画制作中に、モンスター役をやりました。予定していた俳優さんの都合で、急きょワンシーンだけ代役を務めることになったのですが、シチュエーションがあまりに過酷で、死ぬかと思うくらい大変でした(笑)。
でも、意外と楽しかったんです。スケーター時代から、キャラクターを演じるのが大好きで、モンスター役をやりたいとずっと考えていたので。今回は、たまたま急にモンスターを演じることになりましたが、また仕事として機会があればなぁと思います。モンスター役のオファー、募集中です(笑)。
PROFILE 村主章枝さん
すぐり・ふみえ。幼少期をアラスカで過ごす。計五度に渡る全日本選手権優勝、冬季五輪2大会連続入賞、日本人初となるISUグランプリファイナル優勝、四大陸フィギュアスケート選手権三度の優勝。2014年に引退後、カナダで指導。2019年に映画制作会社を設立し、ラスベガスを拠点に映画プロデューサーとして活躍中。
取材・文/岡本聡子 写真提供/村主章枝、株式会社エアサイド