娘さんのキャラ弁をきっかけに、「目玉ゼリー」「指クッキー」「脳みそケーキ」などホラー菓子を作り始めたナカニシア由ミさん。その人気は世代をこえ、海外にも広がり、意外な人たちが購入しています。(全2回中の2回)
空港の自販機で販売「朝5時50分には完売して」
── 『中西怪奇菓子工房。』を設立して10年目。現在も家庭との両立のため、店舗を持たずネット注文を中心に販売されています。テレビなどでもとり上げられ、購入希望者は、あとを絶たないのでは?
ナカニシさん:自宅の1階を工房にして、2階を住居にしているのですが、テレビで見て自宅までいらっしゃる方もいます。そのたびに「すいません」とお断りしていたのですが、遠方からの方もいるので、もっと気軽に購入できるようにしたいと考えていました。
たまたま、コロナ禍で自販機が増えたと聞いて「自販機から目玉が出てきたらめっちゃおもしろい」と調べてみたんです。私が住んでいる大阪府豊中市のふるさと納税には、うちの怪奇菓子が早くから採用されていたのですが、近くの大阪伊丹空港に採用されたら「大阪の新しい土産になるかな」という期待もあり、費用や採算性を考慮して「大阪モノレールの大阪空港駅に自販機を置きたい」と大阪モノレール株式会社に相談しました。担当者はおもしろいと言ってくれたのですが、「お客さんからこんな反応があったらどうするのか」など検討に時間がかかりました。最終的には、社長がゴーサインを出してくれて、決まりました。
── 自販機で販売をはじめて、お客さんは広がりましたか?
ナカニシさん:インバウンドや旅行客を視野に入れ、心斎橋にも自販機を置いています。海外メディアで取り上げられて、海外からも購入希望をいただくことがあるのですが、食べ物ですし、国内発送しかできないんですよ。以前は、日本に旅行にいらっしゃる際に待ち合わせして手渡ししたりしていたんですが、いまは自販機から購入していただけるようになりました。あとはアニメの影響で、ホラーが幅広く受け入れられるようになり、子どもが「怪奇菓子をほしい」とねだるらしくて。おじいちゃんやおばあちゃんたちが「孫が遊びに来るから」と、購入してくれます。
── 自販機というニッチな販路ですが、インパクトは大きそうですね。
ナカニシさん:ウェブ注文だと、お届けするまでに10~14日間くらいはかかるので、実物を見ながら、すぐに購入できる点で自販機を導入してよかったです。以前、浜村淳さんのラジオで紹介されたときの反響はすごかったです。モノレールの駅は、朝5時くらいから開いているようですが、朝6時前にけっこう購入されていました。
自販機に記載している問い合わせ電話番号に、高齢の方々から「使い方がわからない」と問い合わせが入ったり、早々に売り切れたので「次は、いつ入荷するの?」と電話がかかってきたり。そのときは「本日中には補充します」とお返事したのですが、販売履歴を見ると、翌朝5時50分に売れていたんです。
学童のお弁当に入れた目玉ゼリーに娘は…
── 浜村淳さんのパワー、すごいですね!怪奇菓子職人を本業にしたお母さんについて、娘さんはどんな反応でしたか?
ナカニシさん:最初は「うちのお母さん、こんなお菓子作るねん!」と自慢していましたが、小学校低学年のときに「あれ?うちのお母さんの作ってるもの、何か違うぞ」と気づいて、いったんまわりには隠す時期がありました。その前に一度、学童のお弁当に「目玉ゼリーを入れていきたい」と言われたんですよ。私は「絶対やめたほうがいい」と言ったのですが、「大丈夫!」って言うから、充血なしの目玉ゼリーを入れました。でも、やはり「気持ち悪い」と周囲から言われたみたいです。
── その後はいかがですか?
ナカニシさん:メディアで取り上げられるのを見て、少しずつ認めてくれるようになりました。現在、娘は高校生ですが、学校の先生に怪奇菓子を知っている人がけっこういるそうです。怪奇菓子を知らない人には「中西怪奇菓子工房で検索して」と言っているらしいです。うちは、Tシャツやパーカーも作っていますが、それを着て登校する日もあります。