「プライドはいらないけれど」ひとつだけ守り続けたことがある

── プライドが傷つくことはなかったですか?

 

内山さん:そこまで落ちると、プライドを捨てたほうがラクだなと気づくんです。いらないプライドを捨てれば、その1万円ってありがたいんです。ぼくが当時、唯一プライドにしてたのは、どれだけお金がなくても「あの人はいま」といった番組にだけは出演しないようにしよう、ということ。いくら仕事がなくても、自分としてはまだ現役だった。過去の人にされるのは嫌だった。それ以外のものは、もう地面に頭をこすりつけてでももらう。プライドを捨てて頑張っていれば、助けてくれる人も出てくるんですよね。さんまさんとはずっとつき合いが続いていて、仕事がないとき、舞台に呼んでくれたこともありました。

 

── 再浮上したきっかけはなんだったのですか?

 

内山さん:16〜18歳の間は本当に仕事をしていなくて、さんまさんの舞台だけと言ってもいいくらい。そんななか、テレビ東京のバラエティ番組『debuya』がゴールデンになったとき、司会の石塚英彦さんが声をかけてくれたんです。あと、ドラマ『ごくせん』の出演が決まって。やっぱりこの2つが大きいですね。いまはおかげさまで、忙しくさせてもらっています。

 

── 売れないどん底を味わいつつ、再び芸能界に戻ってきた理由とは?

 

内山さん:ふつうじゃ行けないところに行けて、経験できないことをお金をもらってできる。やっぱりそこですよね。過酷なロケもありますけど、ほかの世界ではなかなかできないことなので、好奇心がすごくあって。今年で芸歴37年目に入りました。芸能界って売れなくてもきついけど、売れたら売れたでやっぱりきつい。売れたら、今度は売れ続けなければいけないから。僕も浮き沈みの繰り返しで、さんざんしんどい目にもあいました。それでも戻ってきたのは、芸能界にそれだけの魅力があるってことなんですよね。

 

PROFILE 内山信二さん

うちやま・しんじ。1981年生まれ、東京都出身。6歳でバラエティ番組『あっぱれさんま大先生』にレギュラー出演。以降タレント、俳優としても幅広く活動。映画『秘密』、『TAKESHIS’』、『鋼の錬金術師』ほか。ドラマ『ごくせん』シリーズ、『ヤスコとケンジ』、『一休さん2』 NHK連続テレビ小説『天うらら』、BS時代劇『一路』等に出演。

 

取材・文/小野寺悦子 写真提供/SHUプロモーション