芸歴37年の内山信二さん。最高月収が3000万円から数年で収入ゼロまでを経験。豪遊をしたり、10円単位でお金を切り詰め、生米にかじりついた日もありました。(全5回中の3回)

最高月収は3000万円「芸能界入りは父の口車にのって」

子どものころの内山信二さん
6歳で芸能界に入った内山信二さん

── 芸能界入りは6歳のとき。『あっぱれさんま大先生』のオーディションで明石家さんまさんの目にとまったそうですね。

 

内山さん:6歳で芸能界に入ったことが、僕の人生でいちばんの転機でした。なかでも『あっぱれさんま大先生』に出演した7年4か月はやっぱり大きいですね。芸能界には自分から入ったわけではなく、父のすすめでした。オーディションも父に連れられて受けています。そもそもオーディションと知らず、親には「おいしいハンバーグを食べさせてあげる」と言われていて。でも、現場に行ったらほかの子たちと一緒に部屋に通されて、前に大人が5人くらい並んでいて。「なにこれ?」という感じ。

 

ハンバーグは出てこないし、機嫌が悪くなって。だから挨拶もしない。その姿をさんまさんたちがおもしろいと思ってくれたみたいです。「おはようございます!」って、きちんと挨拶をした子は落とされていましたね。本当にデキる子役たちは受からず、ちょっとダメな子役たちが残った感じでした(笑)。

 

赤ちゃんのころの内山信二さん
11か月のころ。すでに面影が!

── 番組出演をきっかけに、すぐに人気子役になりました。

 

内山さん:最高月収は3000万円までいきました。10歳のときです。そのころ爆発的に売れたんです。1年で20本以上CMに出ていましたね。当時はまだバブルの名残があって、世の中も浮かれていたんですよね。毎月25日が給料日で、現金払い。事務所にお給料を取りに行って、そのまま親に渡していました。おこづかい制ではなくて、好きなときに好きなだけもらう感じです。金銭感覚は崩壊していましたよね。大人買いもしたし、「ウナギ食べに行くからお金ちょうだい」なんて親に言っていましたから。    

気づけば仕事ゼロ「バイトをして気づいた1万円の価値」

── しかし、その後の1990年に『あっぱれさんま大先生』が終了。子役時代が終わりを迎えます。

 

内山さん:番組が終わったのは、中学校2年生のときでした。でも、それから1年くらいはそれなりに仕事はありましたね。「あっぱれの内山くん」ということで呼ばれたので。でも、1年後にピタッと仕事がなくなって、16歳になったときには、仕事はほぼゼロでした。唯一オファーがあるとしたら、「あの人はいま」的な企画くらい。でも、そういう番組に出るのはすごく嫌で毎回、断っていました。

 

高校もいちおう行ったんです。でも3日で辞めちゃいました。近所を歩いていると、「最近テレビ出ないね」「あのころはかわいかった」なんて言われるんです。子役をやっていた人間からすれば、それはかなりきつい言葉で。ぼくも16歳だったから、傷ついたりしますよね。それで外に出るのも嫌になって、1〜2か月間は家に引きこもっていた時期がありました。でも、これじゃダメだと思って、バイトを始めています。ガソリンスタンドで働いたり、引っ越し屋さんでも働きました。

 

10歳のころの内山信二さん
10歳のころ。当時月収3000万円でした!

── かつての人気子役がバイトをするということに抵抗はなかったですか?

 

内山さん:するしかなかったですから。貯金があると思ったら、まったくなかったので。逆に借金まであったんです。それで電気・ガス・水道が止められて…。でも、お腹が空くから、生米をそのままかじっていました。借金はお父さんがこしらえたものでした。ぼくの計算上では1億円近く残ってるはずだったんですけど。たぶん、ぜいたくをしたんです。これはお父さんだけではなくて、家族全員です。

 

たとえば、家族旅行でハワイに行くときもファーストクラスに乗ったり、いいホテルに泊まったり。もうそれが当たり前になっていた。でも、お金がなくなって、バイトをして、お金のありがたさに気づいて。バイトを朝から晩までしても、いろいろ引かれて1万円いかないんです。1万円を稼ぐのがこんなに大変なんだ、と初めて知りました。

 

引っ越し屋のバイトをしていたとき、偶然知り合いのプロデューサーの引っ越し依頼を受け、1万円チップをもらったこともありました。向こうも驚いてましたね。「まさかあの子がここまで落ちるとは」って。かわいそうだと思ったから、「これでなにか食べな」ってくれたと思うんですけど。そのときの1万円は本当に嬉しかった。コンビニでカップヌードルとおにぎりを買っても、まだ9000円残っている。それはバイトの日当以上です。本当に落差がありすぎですよね。小学生のとき、マネージャーに「カウンターの寿司屋行ったことあんのか?」なんて言って、2人で6万円を使っていた子がですよ。何十円まで計算して、「これは高いからやめておこう」と、なるわけだから。