血を全部入れ替えたら…
── 好奇心とチャレンジ精神が旺盛でいらっしゃいますね。
天功さん:昔はそれほどでもなかったのですが、一度、大けがをして血を入れ替えてから、性格が変わっちゃって。
── どういうことでしょう?
天功さん:二代目天功襲名直後に、フジテレビの遊覧船大爆発という脱出企画で、大ケガをしてICUに入ったことがあったんです。当時のことは、あまり記憶にないのですが、船の中が火事のような状態になって、うっかり煙を吸ってしまい、意識を失ってしまったんですね。爆発の勢いで、船室から飛び出して浜名湖に沈んでいたところを、捜索のヘリとダイバーの人が見つけてくれたんです。
そこからはよく覚えていないのですが、体の4か所を麻酔もなく切られ、太いチューブを入れられて、血液を交換したんです。意識はなかったものの、なんとなく痛かったような記憶はあります。血液が真っ黒になっていたらしく、それが脳にまで到達すると危ないということで、大至急、手術をしたんです。でも、血を全部入れ替えたことで、性格がまるで変わっちゃって。
── そんなことがあるのですね…。どう変わったのですか?
天功さん:それまでは人の言うことをすごくよく聞く子だったんです。もともとアイドル歌手だったので、「おはようございます」「よろしくお願いします」「お疲れさまです」以外は言うなと言われ、「はい」と素直に従っていたのですが、血を入れ替えてからは、妙にワイルドな感じになって。周りの人から「あれ以来、すごく変わったよね。はっきりとモノを言うようになった」と。趣味や趣向もガラリと変わって、それまでそんなに好きじゃなかったアウトドアをやりだしたり、いろんな動物をすごく好きになって。おそらく、入れ替えた血の持ち主が、ワイルドな男性だったんじゃないかって言われてます(笑)。
PROFILE プリンセス天功(引田天功)
ぷりんせす・てんこう(ひきた・てんこう)。イリュージョニスト。日本ではアイドル歌手、女優としてデビュー。1980年に二代目・引田天功を襲名。世界的には、イリュージョニストPRINCESS TENKO(プリンセス天功)のステージネームで知られる。1990年に、女性として初の快挙となる米国「マジシャン・オブ・ザ・イヤー」受賞。以降、世界的なイリュージュニストとして活躍を続ける。
取材・文/西尾英子 写真提供/プリンセス天功