サードオピニオンで温存治療をすることに
── 診断後、すぐに治療を開始したのでしょうか?
園田さん:診断してくれた先生もいい方だったのですが、可能性をもう少し探りたいと思い、事務所のマネージャーに紹介してもらった別の病院でセカンドオピニオンを受けました。親身になってくれるとてもいい先生でしたが、やはり全摘出するのがいいという診断でした。しこりが見つかったのが秋で、このころにはもう年末になっていたのですが、全摘出はモデルの仕事への影響もあるので、なかなか決心がつきませんでした。
そのときに元夫の母から、もうひとつ病院を紹介してもらったんです。サードオピニオンのためにその病院を年明けに訪れたのですが、私がベッドで寝ていたら先生がカーテンをすっと開けて、笑顔で「大丈夫ですよ〜」と本当に優しく声をかけてくれて。その瞬間にすごくホッとして、「あ、この人にならすべてを任せられる」と直感的に信じることができました。まさにインスピレーションという感じでしょうか。この先生が決めた治療方針であれば、絶対に納得できると思えたんです。
── 納得できる先生に出会えたのですね。
園田さん:そうですね。そこで再度検査をしてもらった結果、全摘出でも温存でも結果は変わらないので、それならば体への負担が少ない温存治療にしようということになり…。まさかそのような治療法を提案してもらえると思っていなかったので、逆にリスクはないのかと不安になって、いろいろと質問してしまいましたね。
そこからは手術でしこりを取り除き、抗がん剤治療、放射線治療、分子標的治療、ホルモン療法を行いました。トータルで治療期間は5年ほどでしたが、すべての治療が終わったときには「やっとトンネルから抜けられた、頑張った!」という気持ちでした。
治療中はもちろん副作用があり、特に抗がん剤の治療中はホルモンバランスの崩れから、夜に急に不安になったりさみしく感じたりしたことも。息子に気づかれないようにお風呂や布団の中でひとりこっそり泣いていたこともありました。指がこわばってしまうような副作用もあり、それはいまだに続いています。
── 治療をしながらモデルのお仕事をするのは大変だったのでは?
園田さん:逆に仕事が心の支えになっていたと思います。抗がん剤治療の合間の体調がいい時期に撮影をしていたのですが、仕事が私にとってはいい気分転換になっていました。
もちろん体力が落ちていたのでつらいこともありましたが、現場に入ってメイクをすると気分が上がるし、自分が乳がんであることも忘れられるんです。抗がん剤治療で髪の毛がないときは、ウィッグをつけて撮影をしたこともありました。スケジュールを調整してくれたスタッフにも感謝ですね。
2019年に手術から10年経ち節目を迎えて、先生からは「もう来なくても大丈夫」とお墨つきをもらいました。この瞬間は心の中でガッツポーズをしたのを今でも覚えています。でも不安なので、今でも1年に1度は検査を続けています。
PROFILE 園田マイコさん
そのだ・まいこ。1969年、東京都生まれ。18歳のときにモデルデビューし、「LOEWE」「クロエ」「FENDI」などのファッションショーに出演。現在は雑誌、テレビなど幅広いメディアで活躍。また、ピンクリボン運動の講演活動なども精力的に行っている。
取材・文/酒井明子 写真提供/園田マイコ