ルウカレーをさらにおいしくするための応用の「水野流のオキテ」

基本を覚えたら次は応用。メインの具材にあった調理法のコツを覚えておくだけで、家カレーはさらなる進化を遂げるのです。

<応用のオキテ① 野菜の家カレー編>じっくり丁寧に、野菜のうまみを抽出

野菜カレーを作るときに大事なのは、野菜のおいしさを存分に引き出すこと。そのためには、カレールウを鍋に加える前にすることが肝心です。よく炒めるとか、丁寧に煮るとか、時間と手間をかけるとか。味見も大事です。ルウを入れる前の時点で、「ああ、おいしい。カレーにするにはもったいない」くらいまで野菜の味が出ていたら合格!カレーの工程はここまでで95%以上。ルウを投入した後は5%以下の頑張り、というくらいのイメージを持っていてください。もし、旬のおいしい野菜をたっぷり贅沢に使えるカレーを作るなら、細かいことに気をつかわず、野菜の力を信じて作りましょう。

 

野菜カレー
野菜カレーは「じっくり丁寧に調理して、野菜の旨みを抽出すること」

<応用のオキテ② シーフードの家カレー編>時短でささっと。火を入れすぎない

魚介類の風味はとても強く、カレールウの味わいに負けません。だから、素材の食感と風味を大事に、加熱しすぎないでください。「火が通れば完成」くらいの気持ちで作るのがいいと思います。加熱時間が長すぎるとどうなるか、考えてみてください。食感は損なわれます。魚はボロボロになり、エビなどの甲殻類や貝類は硬くなる。風味は強く出すぎて、磯臭さが気になってしまうかもしれませんね。それを避けるには、加熱しすぎない、がいいのです。

 

シーフードカレー
シーフードカレーは「時短でささっと調理し、火を入れすぎないこと」

<応用のオキテ③ 肉の家カレー編>たっぷりな肉のエキスとルウの相乗効果を!

カレールウには、もともと動物性のうま味がたっぷり含まれています。そこに肉のおいしさが加わるのですから、このうえもない、極上の美味カレーができ上がります。ただし、肉を柔らかくするために、肉の種類や部位、形状によって加熱方法が変わります。

 

ハンバーグカレー
肉のカレーは「肉の種類ごとに調理時間を変えて、エキスとルウの相乗効果を狙うこと」

■牛肉や豚肉の場合

  • 薄切りの肉:すぐに火が入るので、どう加熱しても差はありません。
  • 挽肉:時間が短くて済むのにうま味は出やすい。
  • 大きめにカット:やわらかくなるまでに時間がかかりますが、そのぶん、うま味が抽出されて、カレーソースがおいしくなります。

 

■鶏肉の場合

  • 骨のない鶏もも肉や鶏むね肉:10分もかからずに火が入ります。
  • 骨つき:煮込み時間は30分以上になることも。ただし、長く煮込むほどチキンブイヨンのようなおいしさが生まれます。

 

肉のカレーにはもうひとつ、「メイラード反応」という強い味方があります。表面に焼き色をつけるとアミノ酸と糖分が化学反応を起こして「おいしい香り」が生まれるのです。肉カレーの場合は、とにかく、肉には火を入れて、うまみを出すこと。これで、カレールウのおいしさとの相乗効果は約束されています。

 

PROFILE 水野仁輔さん

カレー研究家の水野仁輔さん

1974年、静岡県浜松市生まれ。カレーの人。1999年、カレーに特化した出張料理集団「東京カリ〜番長」を立ち上げて以降、全国各地を訪れてライブクッキングを実施。毎月届くレシピつきスパイスセットを販売する「AIR SPICE」代表。著書は70冊以上。最新刊は『超絶! 肉の家カレー革命 決定版』『旬感! ヘルシー家カレー革命 決定版』(ともに主婦と生活社)。ジンケ・ブレッソン名義で記録写真家としての活動も行っている。