声優と掛け持ちで多様なアルバイト経験も
── ほかの仕事をされた経験はありますか。
菊池さん:声優と掛け持ちしながらアルバイトで接客業をしていたことがありました。飲食店やコンビニ、販売など。でも向いていないと思います。ちょっとしたことでイライラし、態度にも出てしまって。
── イライラしている姿がまったく想像できません!
菊池さん:お客さんに対して、「レシートくらい持って帰ってよ」とか「こんな小さいの、袋に入れなくてもいいでしょ」とかいちいち思ってしまって(苦笑)。でもお金を稼がなくてはならないので、なんとか続けていました。振り返ってみても、あまりいい店員ではなかったと思います。
── 声優1本でやっていくきっかけがあったそうですね。
菊池さん:アルバイト中に、初めてレギュラーの作品を2〜3本いただけたことがありました。アルバイト先に、「シフトに入るのを少しの間お休みさせてください」と言っていたのですが、しばらくして行ってみると、「そんなに入れないなら来なくていいです」と言われて。クビになってしまいました。
声優だけでやっていけるとは今も思っていないんです。でも、クビではありましたけど、「あのときアルバイトを辞めていなかったらどうなっていたんだろう」と思うことはあります。
── さまざまな作品に出られていますが、どうやって役柄を切り替えているんですか。
菊池さん:特に意識はしていないのですが、現場に行ったらその役になるという感じです。でも役に自分がうまくはまらなくて、何度も録り直しになってしまうこともあります。その間、ほかのみなさんをずっとお待たせしてしまうので、申し訳ないなと思いますね。表現できない自分の力不足を感じることもあります。いろんな人の手を渡ってきて仕上がった作品で、声優は声を吹き込むという大切な役割を担っています。これまでの方の努力を台無しにしないようにと思っています。
── 菊池さんが難しいと感じるのはどんな役ですか。
菊池さん:女の子らしくて、優しくて。あまり声を張らないようなキャラクターは難しいですね。あとはナチュラルなもので、実写の吹き替えなども大変です。自分では自然にしているつもりなんですが、声を出しすぎてしまっているみたいで。
── 普段の声も可愛らしいですし、優しいイメージなので意外です!
菊池さん:ぜんぜんですよ。知っている人からは毒があると言われます(笑)。すぐ顔に出てしまうので、周りからは「ほら、黒いのが出た!」と言われています。
── 表に出て活動をしている声優さんもいますし、声優に憧れる方は多いですよね。
菊池さん:今なら引き返せます(笑)。本当に大変なのでおすすめはしないのですが、やりがいがあって、楽しい仕事ではあります。
── 声優としての今後のビジョンを教えてください。
菊池さん:『ちびまる子ちゃん』もそうですが、家族で見られるアニメには一生関わり続けたいと思っています。子どもが喜んでくれることはもちろん、家族で楽しめるアニメや吹き替えの作品にこれからも携わっていけたらと思います。
PROFILE 菊池こころさん
きくち・こころ。東京都生まれ。B型。身長144cm。2003年声優デビュー。特技は犬に好かれることと人ごみをサクサク歩けること。趣味は園芸。2024年4月21日放送回よりアニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公・さくらももこ役の2代目声優を担当。
取材・文/内橋明日香 撮影/CHANTO WEB NEWS 写真提供/菊池こころ