「空前絶後の」自己紹介ネタでブレイク

サンシャイン池崎
「R-1ぐらんぷり2016」出演時のサンシャイン池崎さん

── ブレイクのきっかけとなった、自己紹介ネタが誕生した経緯を教えてください。

 

サンシャイン池崎さん:『天元突破グレンラガン』っていうアニメがあるんですけど、その主人公がめちゃくちゃ暑苦しいやつで。アニメ自体、全部が暑苦しいんですけど(笑)。その世界観がすごく好きで、よく見ていたんです。

 

主人公の男が戦う前に「俺は何とかの何とかの何とかだー!」みたいな前口上を言うんですよね。それがめちゃくちゃ好きだったんで、僕も「サンシャイン池崎です」って名乗る前に前口上をつけてみようかな、そしたらかっこいいかなと思って。別にウケる・ウケないは関係なく、ちょっと言ってみようかなと思って書いたんですよね。

 

でもネタ見せのときにいざ言おうとしたら、めちゃくちゃ噛んで。「ちょっとやり直しさせてください!」みたいなのが何回も続いたときに、作家さんが「はよ名前言えや!」みたいなツッコミを入れてくれて。「あ!なるほど。名前言わねえの、アリだな」と思って。それだったら、名前を言わないネタを作ろうかなと考えて、前口上がめちゃくちゃ長いネタが完成したっていう感じですね。

 

──「売れたな」と実感したタイミングはありましたか?

 

サンシャイン池崎さん:「空前絶後の~」の自己紹介ネタができたときは、ちょっとイケそうだなと思いました。初めてウケたのは、事務所ライブでした。今も月に1回やっている「WEL」というライブに出たときに、当時順位がつけられていたんですけど、めちゃくちゃウケて、圧倒的1位になって。それまでもショートコントとかをしていて、ウケていなかったわけじゃないんですけど、今までにない手応えを感じました。そのころからちょこちょこ深夜番組に出演できるようになって、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」で斎藤工さんが真似をしてくれて。あれでめちゃくちゃ仕事が増えて、「売れたな~」みたいな実感はちょっとありました。

 

── ブレイク後、さまざまな番組に出演されました。特に印象的だった場面はありますか?

 

サンシャイン池崎さん:いろいろあるんですけど、モニター横の位置で初めて出演した「さんまのお笑い向上委員会」ですかね。今は「向上委員会」の話が来たら「怖いな。大丈夫かな」という緊張感があるんですけど、初出演のときはさんまさんにお会いできるし売れてなかったんで、めちゃくちゃ気持ちが入っていて。「やったるぞ!かますぞ!」という気合いと「来た来た!爪痕残しまくったろ!」みたいな気持ちで、精神的にイケイケの状態でした。

 

サンシャイン池崎

豪徳寺のアパートで自己紹介ネタができてから、「R‐1ぐらんぷり2016」の決勝に残ったり、モニター横に出られたり、「ガキ使」の「山−1グランプリ」に出られたり、斎藤工さんが真似してくれたり、結構続いたんですよね。事務所のお笑いナンバー1決定戦でも優勝できて、この時期は調子がよかったです。今ももちろん頑張るんですけど、振り返ってみると、このころはめちゃくちゃ戦ってたなと思います。

 

── 戦う気持ちが落ち着いてしまいそうなときは、どのようにご自身を発奮させていますか?

 

サンシャイン池崎さん:売れてないときって、売れるっていう目標を達成できていないから結果を出しに行く。そのエネルギーが「やったるぜ!」という気持ちにつながっているんだと思います。今も全然達成しているわけじゃないんですけど、慣れてきそうなときは目標を決めるようにしています。たとえば、ネタでも同じことをやっていると飽きちゃうんで、自分を燃やすときは何か1個ギャグを放り込んでみようかなとか、こんなことを言おうかなとか、仕事前に1個新たな目標を決めておくとよりやる気が出るような気がしますね。やってみないとわかんないことを1個置いておくと、ワクワクして、自分の刺激になると思います。

 

普段はわりと静かなほうでプライベートでは極力ボケたくないんですけど、ネタや仕事のときは、衣装を着てハチマキを巻いて「わーっ!」ってテンションを上げると、それまでは気持ちがしんどいときがあっても、やってみたら元気になるんですよね。

アルバイトが番組出演につながったことも

── 学生時代やブレイク前のアルバイトで、芸人生活に役立ったと感じた出来事はありますか?

 

サンシャイン池崎さん:チラシをポストに投函するポスティングのバイトをしていて。僕はポストに入れるスピードがめちゃくちゃ速かったんですよ。「ロンドンハーツ」で、とある集合住宅のポストに池崎が何秒でチラシを入れられるか?みたいなロケをしたことがあって。そのときは、仕事につながったなという気がしましたね(笑)。

 

サンシャイン池崎

ポスティングにはコツがあって。2種類のチラシを入れることを2枚履きって言うんですけど、指サックをしっかりつけることと、欲張って大量にチラシを持ちすぎないことが大事なんですよね。ただ、指サックをつけるとスピードは上がるんですけど、汗をかいてくると指サックが徐々に取れ始めて、指サック自体を投函してしまったこともありました。取り出すことができないんで、投函された人には申し訳ないなと思いながらバイトしていました。

 

── 最後に、今後の目標を教えてください。

 

サンシャイン池崎さん:自分の名前がついた、池崎メインの冠番組をやりたいです。テレビでもラジオでもいいんで、自分のレギュラー番組を持てたらうれしいですね。母ちゃんはあんまり使ってないみたいですけど、仕送りも続けていきたいですね。

 

PROFILE サンシャイン池崎さん

さんしゃいん・いけざき。1981年10月9日生まれ、鹿児島県出身。大分大学を卒業後、ワタナベコメディスクールに入学し、2006年にデビュー。「R-1ぐらんぷり2016」で決勝進出し、翌年には準優勝を果たした。著書に『空前絶後の保護猫ライフ!池崎の家編』(宝島社)などがある。

 

取材・文/長田莉沙 写真提供/サンシャイン池崎