42歳のときに73歳の元TBSアナウンサー山本文郎さんと結婚した山本由美子さん。31歳差婚の出会いは6歳の頃にまでさかのぼりました。(全4回中の1回)

久しぶりに電話がかかってくると

クリスマスパーティーの司会にて

 

── 2008年に“ブンさん”の愛称で親しまれた元TBSアナウンサー、山本文郎さんと31歳の“歳の差婚”をされました。結婚後は、夫婦でバラエティ番組や旅番組などに出演されるなど、仲睦まじい姿が印象に残っています。もともとブンさんとは、子どもの頃から家族ぐるみのおつき合いがあったそうですね。

 

山本さん:主人と出会ったのは、私が6歳頃です。当時、兄が所属していた吹奏楽部がTBSの子ども音楽コンクールの常連校で、その番組の司会をしていたのが、まだ30代の若手アナウンサーだった山本文郎でした。子どもたちの楽器を一緒に運びこんでくれたり、周りを気づかう明るく温かい人柄に、親たちもすっかりファンになり、彼の活動を熱心に応援するようになったんです。みんなで番組を観に行って声援を送ったり、「ブンさんを囲む会」を開いて激励したり。その後、大人になっても交流が続き、私にとっては、“親戚のおじさん”のような身近な存在でした。私はブンさんとは再婚でしたが、実は、1度目の結婚では、披露宴の司会もしてもらっていました。

 

── そんな親戚のおじさんのような存在だったブンさんと、どんないきさつで交際へと発展したのでしょう?

 

山本さん:子どもたちと3人の生活になったことをハガキで知らせたら、すごく心配して、「大丈夫か⁉」と電話をくれたんです。当時、2人の子どもを抱え、“これからどうやって人生を立て直していこう。私がしっかりしなければ…”と、常に気を張っていました。でも、懐かしいブンさんの声を聞いた途端、安心して気が緩み、思わず泣いてしまったんです。「久々に飯でも食うか?」と言われ、再会することになりました。ところが、久しぶりに会ったブンさんは、以前とはずいぶん様子が違っていたんです。

 

── 違っていた、と言いますと…?

 

山本さん:とにかく元気がなくて、発する言葉も後ろ向きなものばかり。あれほどエネルギッシュだった人がなぜ?と、驚きました。私の悩みを相談するはずだったのに、気づけばひたすら彼の話を聞いて、「なに言ってんの、元気出して!」と逆に励ますはめに。予想外の展開に、“あら?私の相談どこいった…?”と思いましたけど(笑)。

 

別れ際に、彼が車の窓から手を出して、「じゃあね。また会おう」と握手をしてきたのですが、グッと手を握られて、思わずドキッとしたことを覚えています。今思えば、私の中で、“親戚のおじさんのような存在”から、ひとりの男性へとスイッチが切りかわった瞬間だったのかもしれません。

 

── そうだったのですね。ところで、なぜブンさんは、そんなに気力を失った状態だったのですか?

 

山本さん:長年連れ添った奥様に先立たれ、子どももすでに独立して家庭を持っている。彼にとって“守るべき人”がいなくなって、“なんのために働いているんだろう”と、生きる張り合いや目標を失っていた時期だったらしくて。きっと人間って、守るべき“何か”がないと、ずっと強いままではいられないのでしょうね。とくに彼は、昭和世代の人間で、“男として家族を守る”という意識が強い人でしたから。

 

── 人間にはいろんな面があるとはいえ、長年メディアの第一線で活躍し続けていたエネルギッシュなイメージが強いので、なんだか意外です。

 

山本さん:はたから見れば、人生が充実しているように見えても、本人はあまりそれに意味を感じていなかったようで、寂しい気持ちを紛らわすかのように毎晩飲み歩いて、彼の親族もとても心配していました。そんなブンさんを見ているうちに、「私がこの人を支えていかなくては」という思いが湧き上がってきたんです。

 

ある時、ブンさんに、「俺の秘書として身の回りのことをやってくれないか?元秘書だからできるだろ?」と言われて。確かにそれまで大手企業の社長秘書として働いてきたので、人をサポートするのは得意。相手の役に立つことにやりがいを感じるタイプでしたし、なによりそんな状態の彼を放っておけず、二つ返事で引き受けたんです。そんななかで自然とおつき合いが始まったのですが、当初は、“別に結婚というカタチにこだわらなくてもいいかな”と思っていました。