競輪や競艇などさまざまなギャンブルをたしなむ、お笑いコンビ・平成ノブシコブシの徳井健太さん。破滅したり依存したりする人がいるなかで、徳井さんはあるルールを決めてギャンブルを楽しんでいるそうです。(全5回中の5回)

 

ギャンブル依存になるかならないか「かけるお金じゃない」

── 徳井さんは、競輪や競艇のテレビ番組の仕事もされていますね。予想したり、一喜一憂する姿がとても楽しそうなのですが、ギャンブル全般お好きなんですか?

 

徳井さん:僕は、やみくもにお金を増やしたいわけではなく、分析して予想を立てるのが好きなんです。だから、「バカラ」とか「ルーレット」みたいなカジノのギャンブルにはおもしろさを感じず、競輪や競艇みたいな頭を使ったものが好きですね。

 

── ギャンブル好きの芸人さんが、多額を的中させたり、借金したりというのはよく聞きます。徳井さんはどんなペースで?

 

徳井さん:競艇なら、自宅からスマートフォンで200円賭けて満足しています。実際、現地に行っても、上限は3万円と決めています。どれだけ勝って払い戻されても、かける額としてはそれ以上は使わない。なんでも、自分がコントロールできる範囲を知っておくのは大切です。タバコも長い間やめていましたが、肺に入れずに吐き出すだけならいつでもやめられると自分の中でわかって、今は仕事の前後に世間話をするために喫煙所に行くようにしています。 

 

── ギャンブルにしてもお酒やタバコにしても、コントロールできなくなるレベルまでいくと依存症ですものね。徳井さんはそういうことはなかったんですか?過去にけっこうな金額で負けたこともあるとテレビで話していましたが。

 

徳井さん:僕自身は、嘘をついたり、信用を失ってまでのめりこんだことはないです。そこまでいったら依存症だと思います。まぁまぁな額を借金したことはありますが…。僕としては、コンスタントに趣味に使ってきた感覚です。 

   

災害ボランティアをするために奥多摩で重機練習中の様子

── 本人もまわりも困ってなければ問題はない、でしょうか。

 

徳井さん:そうですね。芸人の金銭感覚は、特殊かもしれません。お金がないときは本当にないし、来月いくら入ってくるかもわからないこともありましたから。

小さな失敗や傷を経験したほうが後の人生で大ケガをしない

── ギャンブルだけでなく、運動や食べ物も含め、何でも度を超すと依存状態になると思います。先ほど「上限額をマイルールで決める」という話がありましたが、他に気をつけていることは?

 

徳井さん:子育てをするうえで妻ともよく話し合っているのですが、何ごとも小さなトラブルや傷を経験して免疫をつけておいたほうが、後で大きく落ち込んだり、踏み外すことがないんじゃないかなと思います。たとえば、女の子が生まれて、変な虫がつかないように大切に育てあげたけど、社会に出て初めて恋愛して、それがヤバいヤツだとしても、避ける術を持ってないわけですよ。下手したら、闇落ちしてしまうかも。だったら、小中高時代に小さく傷ついたり、悲しい思いもしておいたほうがいい。ギャンブルも酒も同様で、小さく失敗して、恐ろしさを知っておくほうが後々、大失敗を避けられると思います。

 

── ご自身がギャンブル好きだということは、家庭でも隠さないですか?

 

徳井さん:家でスマートフォンから賭ける姿を見せてますよ。ハマると困るから、子どもを競艇や競輪に連れていくのはよくないという考えの人もいるけど、僕は逆です。ギャンブルを知らない、やらない人ほど、少額でもお金が減ることに敏感でイラ立ちます。でも、数千円負けるなんて、長い人生においてたいしたことじゃない、とわかればそこまでイライラしないのでは?100円や200円を賭けて十分楽しんでいる人たちがいて、それがふつうだと感じられる人はギャンブル依存症にはならないと思います。

 

── 徳井さんはお酒も強いそうですね。ギャンブルやタバコと同じく、節度をもってお酒とつき合うようになったきっかけは?

 

徳井さん:お酒が減ったのは、やっぱりコロナですね。僕、大人数での飲み会がめちゃくちゃ嫌いなんですよ。それまでは、行かないといけない飲み会には頑張って行って、何度も失態を演じたり、ケンカになったりしていました。こういうのにうまくつき合える人もいると思うんですけど、僕にはできなかった。だけど、コロナ以降、熱が出れば飲み会は断れました。だから、みずから熱出しまくって(笑)、飲み会を断っていたら誰からも誘われなくなりました。

 

それでも仕事の量は変わらなかったんです。つき合って飲みに行くから仕事をくれるんじゃなくて、僕の能力や人間性を見て選んでくれていたことが浮き彫りになりました。僕が深くつき合いたい先輩や仲間の誘いなら行きますが、好きでもなく信頼していない人と飲みに行くなら、ひとりでボーっとしていたほうがいいと、コロナ禍で悟りました。

 

PROFILE 徳井健太さん

1980年生まれ、北海道出身、NSC東京校5期生。 2000年に吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」を結成。 テレビ朝日系『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』にレギュラー出演中。芸人や番組を愛情たっぷりに考察する事でも注目を集めている。 最近では、幼少期の経験から、「ヤングケアラー」をテーマにした講演会を全国各地で行っている。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/徳井健太、吉本興業株式会社