すべて正反対のコンビ「あえて会話をせず平和を保つ」

── 35歳で小藪さんと出会い、考え方も生き方も変わったそうですね。いつの間にか徳井さんは「腐り芸人」から「悟り芸人」に変化したように見えます。

 

徳井さん:無感情で人を傷つけまくってきた僕ですが、小藪さんに精神をたたき直され、人の気持ちを考えられるようになりました。その後、テレビ東京の深夜番組『ゴッドタン』に「腐り芸人」企画に出ました。でも、実際の僕はもう腐ってなかったんです。そのころからYouTubeを始めて、好きな人やモノをひたすらほめたり諭したりするうちに、「悟り芸人」と徐々に呼ばれるようになったんです。そして僕に仕事をくれる人に恥をかかせないように頑張って仕事していたら、今までとは違う、例えば芸人や番組を愛情こめて考察する仕事などが増えていきました。

 

── 悟ってからは、吉村さんへの見方は変わりましたか?今年でコンビ結成24年目ですね。

 

徳井さん:いろんな人の気持ちを考えるようになり、なるほど人ってそういう生き物なんだな、と思うようになりました。他人に腹を立てることがあっても、「そういう考え方の人も世の中にいっぱいいるから、しかたない」と思えます。それに、「僕も人の感情がわからないからしかたない、ごめんね」って。世の中、多様性だと悟りましたし、吉村のこともそう受けとめています。

 

でも、吉村とは細かい部分も含めて、何度も衝突してるんですよ。しかも、お互い引かない。僕らは漫画にしても焼肉にしても、すべて好みも意見も真逆なんです。楽屋に置かれているお菓子ひとつとっても、僕が「あれ、美味しいよな」って言っても、「そうかな」ってケンカになっちゃう(笑)。だったら、そのひと言をやめとこうってなりますよね。激しい論争やケンカに至らない状態を続けるほうが、平和なんです。それが、平成ノブシコブシを長く続ける秘けつです。よほどのことがあればしゃべりますけどね。

 

意見が異なったとしても、軽い仲なら笑って済ませられるけど、吉村とは仕事で深い関係にあるので、もうケンカの火種ごと消していったほうが、一番仲良くいられるんだろうなぁ、と思っています。年配の夫婦が別々に旅行したりしますが、そんな感じかな。

 

PROFILE 徳井健太さん

1980年生まれ、北海道出身、NSC東京校5期生。 2000年に吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」を結成。 テレビ朝日系『楽しく学ぶ!世界動画ニュース』にレギュラー出演中。芸人や番組を愛情たっぷりに考察する事でも注目を集めている。 最近では、幼少期の経験から、「ヤングケアラー」をテーマにした講演会を全国各地で行っている。

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/徳井健太、吉本興業株式会社