まさかの大舞台で頭が真っ白に

お笑い芸人・ぼる塾

── NSCを卒業後、はるかさんと2人のコンビ「しんぼる」は順調でしたか?

 

あんりさん:毎日楽しかったですけど、5年間は売れなかったですね。ライブでウケてもそれだけじゃダメで。周りの先輩たちがテレビに出始めていた時期だったし、私たちも番組のオーディションを受けて、もっと活躍していこうと話していたんです。

 

ただ、不安要素はありました。はるちゃん、よくネタを飛ばすんです。その都度、私がフォローしていましたが、”ここぞ”というM-1の予選でまた飛ばしたんです。「まさかこれ飛ばす?」と予想もしなかった部分を飛ばしたので、私も頭が真っ白になってしまって、その場でフォローできなくて。2人で「すみませんでした!」と謝って、舞台のソデにはけました。

 

── なかなか緊迫した空気ですね…。

 

あんりさん:なんで肝心なところで飛ばすんだ!ってイラッとしたし、相手を責めるような気持ちもありました。

 

でも、少し冷静になって気づいたんです。いつもはるちゃんのせいにしているけど、はるちゃんの魅力を活かせないのは自分じゃないか。売れないのもそう。いつも自分が正しくて、はるちゃんが間違えだって決めつけてる。もうダメだ。はるちゃんを生かせるのは自分じゃないし、はるちゃんを嫌いになるのは嫌だ。はるちゃんにはこのまま芸人を続けてもらって、私は辞めると伝えました。はるちゃんは止めてくれましたが、私の意志は変わらなくて、最後にライブをすることになったんです。

 

── 解散ライブですか?

 

あんりさん:はい。でも、私とはるちゃんだけではお客さんが呼べないので、先輩コンビの『猫塾』さん(酒寄さん、田辺さん)を誘って2マンライブをしようという話になりました。ただ、酒寄さんが妊娠中で、つわりのため出られなくなったので、私とはるちゃん、田辺さんの3人で急遽、舞台に立つことに。そしたら、今までに感じたことがないウケがあったんです。びっくりしました。もう、あのウケを味わってしまったらやっぱり辞められない…。そこから私も再度奮起して、「ぼる塾」としての活動がスタートすることになります。

 

PROFILE あんりさん

1994年生まれ。東京都出身。お笑い芸人。あんリ、きりやはるか、田辺智加、酒寄希望と共にお笑いカルテット・ぼる塾を結成。

 

取材・文/松永怜 写真提供/あんり