NSC(吉本総合芸能学院)に入ると、初めて積極的に人生を切り開いていったと語る、ぼる塾・あんりさん。今ではぼる塾として人気を集めますが、実は「芸人辞める」と宣言した過去が。(全5回中の4回)
友達と一緒に働けるならいいかと
── 相方のはるかさんに誘われて芸人の世界に入ったそうですが、はじめは乗り気ではなかったそうですね。
あんりさん:中学のときにはるちゃんに誘われましたが、その時は断ったんです。私もはるちゃんも人前に出る性格じゃないし、怯えるからムリだよって。
高校生になり、私は中退してコンビニでバイト生活。はるちゃんは4年間の定時制高校に通っていました。はるちゃんが高校3年生のときに「高校卒業したらどうするの?」と軽い気持ちで聞いたら「え?行こうよ、養成所。私、お金貯めてるよ」と返ってきたんです。私は中学のときに断ったはずだけど、はるちゃんには伝わってなかったみたいで。でも、私も将来について何も決めていなかったし、友達と一緒に働けるならいいか、くらいの感覚でNSCに行くことを決めちゃいました。
── NSCは途中で挫折する方も珍しくないと聞きます。あんりさんはいかがでしたか?
あんりさん:養成所に入ると“ネタ見せ”といって、講師とクラス全員の前でネタを見せて、講師からコメントをもらえる機会があるんですけど。1回目のネタ見せのとき、はるちゃんがネタを書きたいというから任せましたが、はるちゃん、国語が苦手なんですよ(笑)。文章にもなってないようなネタを作ってきたので、さすがにこれはちょっとムリだなと。私は国語が多少得意だったし、まだ少しは書けるんじゃないかと思って、私がネタを作りました。ただ、私が作っても全然ダメ。まったくウケず、これは本腰を入れて真剣にやらないといけないなと思いましたね。
そこからは、自分たちのネタ見せだけではなく、他の生徒のネタも全部見て、講師のコメントもメモって、授業も真剣に聞いて…と続けていたら、だんだん反応がよくなっていったんです。毎日ちょっとずつ前に進んでいる実感もあるし、辞めるどころか毎日充実していましたね。
── 日々成長が感じられて。
あんりさん:あと、自分が何かやって評価を受けた経験が初めてだったんだと思います。
── 初めてというと?
あんりさん:NSCに入るまで、自分から率先して行動したことがなくて、全部人が切り開いた道に乗っかってきた人生だったんです。
たとえば、小・中学校でたくさん友達ができたのも、私にヤンチャな兄が2人いて、兄の妹ということで周りから声をかけてもらえました。高校を中退してバイトが楽しかったのも、バイト仲間が人間関係を広げてくれたおかげです。
でも、NSCに入って真剣に芸人を目指すようになると、自然と行動が積極的になって、ちょっとずつ評価されるようになっていったんです。ネタを作るのも毎回必死だったし、毎日を振り返る余裕がないくらい忙しくて充実していました。
── ちなみに、あんりさんは舞台やテレビで“豪快な話し方”をすることがありますよね。何か影響があったのでしょうか?
あんりさん:NSCに入るまで人からイジられたことがなくて、ライブで初めてイジられたとき、ビックリしたんです。ただ、うちの家族は父が元暴走族で、母が元レディース、兄もヤンチャだったので、家の中ではいつも豪快な口調が飛び交っていたから、ライブで初めてイジられたときに、「なんだこのヤロー!」って自然と出ちゃったんだと思います(笑)。今では私の持ち味になってる感じですね。