静かな空気の中で父が語ったこと

『しんぼる』時代のきりやはるかとあんり
『しんぼる』時代(左) きりやはるか(右)あんり

── 今はお父さまとお話しされますか?

 

あんりさん:今は話します!テレビに出ていることも、めちゃくちゃ喜んでくれて。

 

── いつごろからお話しされるようになったのですか?

 

あんりさん:正直、大人になってからかもしれないですね。私は高校中退してアルバイト生活をしていましたが、はるちゃんが高校を卒業したら、一緒にNSC(吉本総合芸能学院)に行くことを決めていたんです。ただ、親にどのタイミングで話をしよう。今までお笑いが好きだとか、お笑い芸人になりたいといった話しもしたこともなかったし、NSCに行きたいって話も急過ぎる。そうこう迷っているとき私の誕生日があったんです。私の実家は誕生会をしっかりやる家だったので、何か発表するならそこしかないと覚悟を決めました。

 

当日、みんなにひと通り祝ってもらった後に「ちょっと話したいことがある。実はお笑い芸人になりたくて、NSCっていう吉本の養成所に通おうと思っていて、今はバイトしてお金も貯めてる」と初めて家族の前で言いました。

 

── ご家族の反応はいかがでしたか?

 

あんりさん:みんな驚いて静かになってるし、祖父母も「高校も中退してるし、お笑い芸人も大変だぞ」と、ちょっと止めるような感じもあったなかで、父がひとり「あんりが何か欲しいとか、何かやりたいとか、俺は今まで聞いたことなかった。あんりが初めて言ってくれたことだから、俺は応援したい」と。当時、NSCの入学金と授業料を合わせて40万円くらいで、私は20万円程貯めていましたが、「あとの20万円は俺が出す。今まであんりには何もやってこなかったから、やらせてくれ」って言ってくれたんです。

 

── ずっとあんりさんのことを見ていてくださったんですね。

 

あんりさん:嬉しかったですね。その後はNSCに入って芸人になりましたが、今は「どうなんだ、お笑い?」と聞いてくれることもあって、父と話す時間も楽しいです。今は私がテレビに出ていることを喜んでくれますし、父の応援も何より励みになっています。

 

PROFILE あんりさん

1994年生まれ。東京都出身。お笑い芸人。あんリ、きりやはるか、田辺智加、酒寄希望と共にお笑いカルテット・ぼる塾を結成。

 

取材・文/松永怜 写真提供/あんり