娘にはできれば卓球はしてほしくない

── 娘さんは1歳になりましたね。どんな風に育って欲しいと思っていますか?

 

平野さん:とにかく自分がやりたいことを見つけてそれをのびのびやってほしい気持ちが強いですね。それをサポートしたいです。私も夫も両親に自分がやりたいことを応援してもらってきた人生で、これをやれとか、これをしないといけないと強制されるような環境では全くなかったので。それがありがたかったなという気持ちが、私も夫も同じようにあります。

 

あとは本当に健康でいてほしい。何をするにしても健康なカラダがあってこそなので、娘に関してもやっぱり健康第一で、ですね。

 

── 娘さんには卓球をさせたいと思いますか?

 

平野さん:絶対やらせたくない。あっ、絶対だと怒られちゃうから、できればやってほしくないにします(笑)。やっぱりスポーツで体を動かすといろんな学びがあるので、 強くなるとかトップ目指すとかじゃなく、スポーツに触れてほしい気持ちはあるにはありますけど。

 

卓球をやらせたくない理由は、やっぱり自分が卓球の選手だったこともあるので、平野の娘みたいに見られるのもかわいそうだし、「強くなりたい」みたいな気持ちが出てきたときに、うちの子をお願いしますと任せられた方も、私がいることによってプレッシャーになっちゃうのも嫌だし。

 

── 平野さんが見てあげるという選択はやっぱり難しいものですか?

 

平野さん:「この練習をしたことで強くなった」などの経験があるので、子どもに教えるとなると、自分のエゴというか、考えが強く出てきて娘の邪魔をしちゃいそうなので絶対したくないですね。それが原因で親子関係が悪くなるのも嫌だし(笑)。

 

私はどちらかといえば、子どもと一緒に旅行に行ったり遊びに行ったりすることの方がしたい。子どもにはできるなら私が知らない、私が経験したことのない世界に触れてほしいですね。それをサポートしたいです。

 

PROFILE 平野早矢香さん

1985年生まれ。栃木県鹿沼市出身。5歳で卓球を始め、仙台育英学園秀光中学校・仙台育英学園高等学校に進学。卒業後ミキハウスに入社、オリンピックでは2008年北京にて、団体戦4位。2012年、ロンドンでは福原愛、石川佳純両選手とともに団体戦で銀メダルを獲得。男女通じて日本卓球史上初の五輪メダリストとなった。現在は後進の指導に務めるほか、全国各地にて、講習会、講演会、解説、スポーツキャスターとして広く活動。

 

取材・文/平岡真汐 写真提供/平野早矢香