前向きであるからこそ頑張りすぎていた

── 過労やストレスが主な原因とされているようですが、藤さんの場合はいかがでしたか?

 

藤さん:先生から聞いた話では、音を感じ取って脳に伝える役割をしている細胞が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こるようなんです。音が聞こえにくくなる方もいますが、私の場合は音が聞こえすぎてしまっていました。

 

先生から、精神的に強いと体のダメージに気づきにくい。我慢強い人は特に注意する必要がある言われて納得。それまで、ずっとひとりで「私が頑張らなきゃいけない」って思っていたので、それだったのかなと思いました。

 

── 休養後4か月で復帰されましたが今はいかがでしょうか?

 

藤さん:復帰した時も100%治ってはいなかったのですが、テレビに映っても分からないぐらいまでもってこられたかなと思いステージに。今は再発することはないだろうとは言われていますが、原因がストレスに起因するとなれば、こればっかりはわからないですものね。ストレスためないような生き方をしなきゃいけないなって。

 

振り返れば相当我慢していたんでしょうね。私は前向きであるから故に、「大丈夫、大丈夫」って頑張っちゃうし頑張れちゃう。やっぱりある程度は自分にも優しくしようと思うようになりました。

 

── 歌手デビューから35年を迎えましたが、今後はどのような歌を歌っていきたいですか?

 

藤さん:2023年末にカバーアルバムを制作したのですが、実はガンで余命宣告をされた恩人のために制作したものでした。その制作中に、「歌は歌うんじゃない、語るんだよ。歌詞は読むんじゃない、歌うんだよ」という歌の師匠であった猪俣公章先生の言葉をリアルに感じました。愛する人を失う悲しみというのは本当に苦しいけれども、こうやって人々が残してくれてきた思いを繋げていく、そんな風に歌を歌っていきたいと思っています。

 

PROFILE 藤あや子

1961年生まれ。秋田県角館出身。1989年にシングル「おんな」でデビュー。代表作はシングル「こころ酒」「むらさき雨情」など。ユニークな愛猫との日々を綴ったSNSも大人気。カバーアルバム第3弾「Ayako Fuji Cover Songs 喝彩~KASSAI~」も発売中。


取材・文/平岡真汐 写真提供/藤あや子