現在、9歳と7歳のお子さんの子育てに奮闘中の林丹丹さん。幼稚園・小学校受験を経て親子で成長したエピソードや、芸能界に復帰した現在の思いについて伺いました。(全3回中の3回)

親子で成長するために幼稚園・小学校受験に挑戦

── 2人のお子さんは、幼稚園・小学校受験を経験されたそうですね。

 

林丹丹さん:「幼稚園や小学校受験ってどんなものなんだろう?」と、長男が1歳半のころに幼児教室に入れてみたのがはじまりです。

 

最初はよくわからないまま幼児教室の課題に取り組んでいたのですが、親子で課題をクリアしていくうち、「幼稚園・小学校受験を乗り越えれば、親子ともに大きく成長できるのでは」と思うようになりました。

 

思えば、それまでの私の人生でも「課題を一つひとつ乗り越えること」は大きなテーマでした。だからこそ、課題をクリアして自信に変えていく経験を、子どもにも小さなうちから積み重ねてもらえたらと思い、受験を決めました。

 

娘さんと夕陽を眺める林さん
娘さんと夕陽を眺める林さん

──  受験を乗り越えるうえで、どんなことが大変でしたか?

 

林さん:幼児の受験は、身の回りのことやお手伝い、季節の行事、キャンプや植物の観察などの自然体験といった日々の生活すべてが学びにつながります。普段の家事・育児をこなしながら、常に学びのアンテナを張り続けるのは大変でしたね。

 

でも、親が常に気を張っていても、子どもの気分には波があります。その波に合わせて話し方や伝え方を工夫するのに、いちばん苦労しました。

 

とくに長男のときは、下の子を連れて教室に通っていたので、体力的にも精神的にも大変でした。子どもに寄り添えるお母さんでいたいのに、余裕がなくなってすべてがうまくいかなくなってしまうことも。何度も心が折れかけましたが、「コツコツ続けることが大事」と、自分を奮い立たせて乗り越えました。

 

長男とキャンプ場で
長男とキャンプ場で

子どもは親の見えないところで頑張っている

── お子さんの気持ちが下がってしまったときは、どうフォローしていましたか?

 

林さん:気持ちが下がっているときは、自分でできるのに「ママやって」と甘えてくることが増えるんです。そんなときはいまも「今回だけね」とニコニコしながら、素直に甘えさせています。

 

── 甘えさせてあげるのも大切と聞きますが、「自分でできるでしょ」と突き放してしまいがちです…。

 

林さん:わかります…!わたしが素直に甘えさせてあげようと思えたのは、数年前、公園で息子とお友達のやり取りを見かけたのがきっかけなんです。

 

お友達を遊びに誘って断られてしまった長男が、後でもう一度勇気を出してお友達に声をかけている姿を見て、「親には幼稚園での様子は見えないけど、子どもたちはお友達との些細なやり取りを積み重ねながら、毎日頑張っているんだ」と、何だか胸を打たれてしまいました。

 

その日から子どもたちには、「外で頑張っているんだから、家では安心してゆっくりと過ごしてほしい」と思うようになったんです。

 

引退して10年間は子育てに奮闘!
引退して10年間は子育てに奮闘!

──  おうちでの安心感って大切ですね。

 

林さん:もうひとつ心がけているのが、できるようになったことを見つけて、子どもに伝えることです。苦手なにんじんをひと口食べてみたとか、お友達に勇気を出して話しかけてみたとか、ほんの小さな成長でいいんです。「最近、こういうこと頑張ってるね、気づいてるよ」と伝えることで、「ママはいつも見てくれている」という安心感につながると思っています。

 

私たちも料理や掃除、子どもの送迎など毎日頑張っていることを家族に気づいてもらえたら嬉しいじゃないですか。大人も子どもも同じですよね。

少しの後悔とかけがえのない経験を胸に前進したい

── 今年、芸能界に復帰されましたが、いつ頃から復帰について考えていたのでしょうか?

 

林さん:引退してからずっと「家庭の基盤ができたら、また社会に出たい」と思っていたんです。昨年、長女の小学校受験が終わったタイミングで、「働く姿を子どもたちに見せたい」という気持ちが大きくなり、具体的に考え始めました。

 

── 芸能界以外のお仕事に挑戦しようとは思いませんでしたか?

 

林さん:いまやキャリアもない、社会もよく知らない自分に一体何ができるのか、すごく考えました。そのとき、子どもとの接し方や親としてのあり方に悩みながら子育てしてきたことを思い出したんです。

 

まだ子育てをはじめて10年ですが、芸能界で私の経験を発信することで、私と同じように育児に悩むお母さんの背中を押せるかもしれないと考えました。とはいえ、私自身も役に立てる場を模索している最中で、正直将来への不安もあります。でも、だからといって諦めるのは、私の生き方に反すると思ったんです。

 

子どもに「働く姿を見せたい」と思うように
子どもに「働く姿を見せたい」と思うように

──  俳優のお仕事にも再挑戦したいですか?

 

林さん:私と同年代の俳優さんの努力を見ていて「すごいな」と尊敬すると同時に、「私は続けられなかった」「全力を出しきれなかった」という後悔もあります。もし今後、映画やドラマといった表現の場で役立てるなら、ぜひ挑戦したいです。

 

──  まったく後悔のない人生って難しいですよね。でも、かつての決断があったからこそ経験できたこともあったのではないでしょうか。

 

林さん:結婚して家庭に入ったのは、もちろんいい経験だったと思っています。誰かとずっと一緒に暮らすって、お互いに大変なこともありますよね(笑)。演技の仕事についても、いまは結婚や育児を経験したからこそ、以前より深く役を理解できるんじゃないかと思っています。

 

女性の人生には、大きな決断をしなければならないタイミングが何度かあります。その節目に5年後、10年後のライフスタイルを把握するのは難しいですが、いままで自分が下してきた決断を受け入れて、これからも前進する努力を続けていきたいです。

 

PROFILE 林丹丹さん

大阪府出身。日本語・英語・中国語が話せるトリリンガル。2006年国民的美少女コンテストでグランプリを獲得し、デビュー。「交渉人~THE NEGOTIATOR~」など人気ドラマで活躍も、2013年に結婚し、翌年に芸能界を引退した。2児の母として幼稚園・小学校受験を経験し、2024年に芸能界に復帰。

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/林丹丹