長女の俳優業に反対するも

── 現在、長女は俳優・成海花音さんとして芸能界で活躍しています。俳優になりたいと言われたとき、率直にどう思われましたか?

 

佐伯さん:直接、辞めなさいとは言いませんでしたが、心の中ではもちろん反対でした(笑)。ただ、小さい時からドラマ好きだし、学校の学芸会では主役に立候補する子だったので俳優になりたいって言うんだろうなとは予感していたんです。

 

中学のときに改めて言われた際は、芸能界が想像するほど華やかな世界じゃないことを知ってもらいたくて、自宅近くでやっていた映画の撮影のエキストラに携帯から応募させたんです。一度現場を見てきなさいと。撮影は時間通りに進まないし、一生懸命やっても映らないことがあることも実際に体験してもらいたいと思って。

 

そしたら案の定、予定より3時間撮影が延び遅くに家に帰ってきて、きっと「すごい大変だった」って言うだろうなと思ったら、「今回はカメラの後ろだったけれど、いつかちゃんと台詞をもらってカメラの前に立ちたい」と余計ガッツが湧いてきたようで。最後はその熱意に私が折れました。

 

── 本当に俳優業に憧れていたんですね。演技のアドバイスなどはしますか?

 

佐伯さん:彼女のしたいように演じることが大切だと思うので私からは何も言いませんが、台本の読み合わせはお願いされたら手伝いますし、どうかな?って聞かれたら「この人はこんな気持ちかもよ?どう思う?」と言うことも。あとは現場ではこういうことはしちゃいけないよっということだけは伝えています。

 

── 一方で次女さんはバレエ一筋で、今はイギリスに留学されているそうですね。

 

佐伯さん:バレエとコンテンポラリーを学べて大学卒業の資格まで取れる学校に留学しています。卒業まで通ったら900万円くらいしますが、日本で大学に通いながら別でバレエをすることを考えたら、留学なら英語も学べるので、長い目で見たら彼女にとって素晴らしい経験になるのかな、なんて。口では言っていますが、請求が来るたびに「何だこれ!?」って思いますよ(笑)。わが家は富豪でもないので、私の老後はちょっと心配です。

 

でも、青臭いこと言うようですが、娘には夢を見させてもらっているなという感覚も実はあります。次女は過去にベルギーのバレエ学校のオーディションに最終審査で落ちて挫折したんですけど、その後なんとか踏ん張って今また夢に近づこうとしているから。挫折と成功の経験が人間を豊かにするんだなと改めて感じています。

 

PROFILE 佐伯日菜子

1977年生まれ。17歳のときに、映画『毎日が夏休み』で主演デビュー。同作品で、『第18回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。映画『らせん』で山村貞子役を演じ、その後はホラー漫画家・伊藤潤二の原作を映画化した『うずまき』などに出演し、 “ホラー・クイーン”としてJホラーブームを牽引した。


取材・文/平岡真汐 写真提供/佐伯日菜子