“スーパーお母さん”の存在に落ち込んで
── ところで、ご自身のブログで子育てを振り返って「英検、漢検のように母検があったら間違いなく落第だ」と書かれていたのが印象的でしたが、どのような理由がありましたか?
佐伯さん:私はとにかく不器用で、料理とか掃除とか手際よくできないんですよ。だから、いつも娘たちに申し訳ないなって気持ちがあったんです。仲のいいママ友に“スーパーお母さん”みたいな方がいて、以前早朝の撮影があったときにやむを得ず、前日から次女をお願いしたことが。そしたら、「今こういうことしてるよ」「お夕飯はこういうの食べたよ」「お弁当はこういうの作ったよ」って、LINEに送られてくる写真がことごとく素敵すぎて、我が家との差に愕然としました。しかも次女もすごく嬉しそうな笑顔だったから、子どもからしてもこういうお母さんがいいんだろうなって。
── 自分が思い描く母親像になれず落ち込むことありますよね。
佐伯さん:俳優としていろいろな作品に出させていただいて本当に感謝しているのですが、おいしいご飯が作れるとか、テキパキ掃除ができて、お花も育てられてとか…そういうのを学んできた方がよかったのかなって、本気で自分の人生を振り返って悩んでしまったことも。
もちろん私なりにある程度頑張ろうと、まずは見た目も美しいご飯作れたらいいなと思い、料理教室にも通ったんですが途中で挫折。途中で飽きちゃったんです(笑)。だから、もう私は私、人は人でやっていくしかないと落ち着きました。人には向き不向きがある、と割り切ることも大切ですよね。
── 子育てを卒業された今はどんなことを楽しんでいますか?
佐伯さん:仕事、ですね。デビューのとき以上に楽しくてしょうがない。育児で休んでいた時期も長かったので、撮影現場に行かれるありがたみをすごく感じています。この気持ちを大切に、このままやっていけたらいいなっていうのはありますね。
プライベートでの楽しみはマンガを読むこと。今好きなのは『霧尾ファンクラブ』という青春コメディ。今さらなんですが、『鬼滅の刃』も読了しました。また、何よりの癒しは猫です。今4歳になる保護猫で、次女が大好きな「SEKAI NO OWARI」さんの動物の保護活動を知ったことを機に飼うことにしました。もう私にべったりなんです。可愛すぎて相思相愛。あっ、相思相愛かどうかはちょっと猫に聞かないとわからないですね。
PROFILE 佐伯日菜子
1977年生まれ。17歳のときに、映画『毎日が夏休み』で主演デビュー。同作品で、『第18回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。映画『らせん』で山村貞子役を演じ、その後はホラー漫画家・伊藤潤二の原作を映画化した『うずまき』などに出演し、 “ホラー・クイーン”としてJホラーブームを牽引した。
取材・文/平岡真汐 写真提供/佐伯日菜子