料理好きとして知られる俳優の中村倫也さん。3月14日には初の料理本『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)を上梓しました。中村さんならではの独創的な料理名やレシピはもちろん、料理ができ上がるまでにかわされる料理監修の先生との会話も描かれ、普段から自由に料理を楽しむ中村さんの様子を窺い知ることができる1冊です。

 

ライフステージの変化により家庭と仕事を両立する状況が生まれているなかで、中村さんが両立するために心がけていることをお聞きしました。

家事は段取り「あとでラクしたいから事前準備するタイプ」

──『THE やんごとなき雑炊』では、レシピだけではなく、料理の美味しさを格上げするプロセスや段取りについてもわかりやすく説明されていますね。中村さんご自身が普段料理を作るときも、段取りや効率を意識されていますか?

 

中村さん:まず、自分のなかで使い勝手のいい食材を4〜5日分まとめて買っておくことですかね。玉ねぎ、じゃがいも、なす、小松菜、キャベツ、トマトとかの野菜と肉や魚、シーフードミックスとかを冷蔵庫に入れておく。あとは麺類とか。

 

そうやってストックしておいて、その日の気分で和洋中の調味料と組み合わせるだけです。自分のなかで、「これさえあれば、あの料理ができる」っていう定番を、切らさないでおく。そこから段取りって始まっているんじゃないですかね。

 

『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)より
『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)より。メニュー名は「中国の、⽥舎町の、怖い先輩雑炊」

── ほかの家事でも段取りを大事にしてますか?

 

中村さん:調理しながら洗い物するとか、脂っこいものは洗剤につけておくとか。料理ができ上がる頃には洗い物を終えていたいと思って段取ってます。掃除とかも気づいたらちょこちょこ掃除機かけたり、コーナーだけ掃除したり。洗濯も仕分けをしておくとか、事前準備をしておくタイプかも。あとでラクをしたいから。段取っていかないと、あとで不具合が出てくるじゃないですか。それって仕事でも同じですよね。

 

俳優の中村倫也さん

── 家事力がすごいです! 逆に苦手な家事はないんですか?

 

中村さん:洗濯物を畳んでしまうことです。どうせすぐ着るんだし、出しっぱなしでいいじゃん、って。ひとり暮らしのときは洗濯乾燥機から出してそのまま着てました(苦笑)。でももちろん、結婚してからは収納のエリア分けがされましたし、出しっぱなしってわけにはいかないので、ハンガーにかけてそのままクローゼットへ、って感じです。

家事が思うようにいかなくても全部ひとりで抱えないで

──『THE やんごとなき雑炊』の撮影では、食材の切り方や出汁の取り方などの手順の大切さを実感したとか。そんなふうに、家族や自分のために料理や家事に時間をかけられるといいですが、仕事や日々の雑務に追われて時間が取れないと悩む人も多そうです。そんな人にアドバイスをするとしたら?

 

中村さん:「ちゃんとしたい」目的がどこにあるのか、ということだと思います。疲れていたとしても体力を使ってでもやりたいことか、やるべきことかどうか。家庭生活でも仕事でも同じだと思いますが、その目的がはっきりすると、「ない時間をどうにかして作ろう」という方向に気持ちがいく気がします。

 

俳優の中村倫也さん

家のことを全部ひとりでやるのはしんどいし、限界がある。家族って一緒に生きるメンバーじゃないですか。そのメンバーと目的を共有して、いかに一緒に生きるかを考えながら、お互いができることをやるのが大事なんじゃないかと思います。

 

──「一緒に生きるメンバー」って、いいですね。

 

中村さん:家族とか仲間とかもそうですけど、一緒に生きるメンバーって考えると、よりいっそう自分の心にゆとりを持つ大事さにも気づくというか。人を思いやるって、自分の心にゆとりがないとできないですから。今回の本を作る際も、チーム力が大事だったので特にそう思いますね。

 

料理監修のタカハシユキ先生の力をお借りしてレシピとしても美味しいものに仕上がったのは、チーム力があればこそ。それに作っている工程や先生と交わした会話も担当のライターさんに記録してもらっているので、作り方のレシピではわからない、料理の段取りにもさまざまな発見があるはず。読んでも面白い料理本になったと思います。

 

俳優の中村倫也さん

── チームでひとつのものを作り上げる醍醐味を実感されたのですね。そういう意味でも、自分がゆとりを持つための努力は必要そうです。

 

中村さん:そうですね。どうしたら、自分にゆとりが生まれるか、その方法を自分で見つけることが必要だと思います。今回、料理本を作ることで、幼い頃のこととか、母親が作ってくれた料理とかを遡ることになったんですが、うちの両親は時間がないなかでも「なにか楽しいことをしよう」と頑張ってくれていたなあって思い出すんですよ。

 

自分も歳を重ねて、いろんな人と仕事をするようになって、思い通りにいかないこともあって。でもつまり、自分の親もそういう苦労があったんだろうけど、家の中では「楽しいことを」ってしてくれてたんだなあと。そのことに対して尊敬がありますし、だから自分もそうありたいと思いますね。

 

 

◆書誌情報
書名:THE やんごとなき雑炊
著者:中村倫也
監修協⼒:タカハシユキ
発売:2024年3⽉14⽇(⽊)
定価:1,870円(本体1,700円+税)
判型:A5判 ⾴数:136⾴(オールカラー)
ISBN:978-4-04-114256-1
発⾏:株式会社KADOKAWA

 

PROFILE 中村倫也さん

1986年、東京都生まれ。俳優。2005年、デビュー。近年の出演作にドラマ『ハヤブサ消防団』、映画『沈黙の艦隊』、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』など。映画『ミッシング』が2024年5月17日に公開予定、劇団☆新感線44周年興行夏秋公演いのうえ歌舞伎「バサラオ」(7月〜10月公演)への出演を控えている。著書にエッセイ集『THEやんごとなき雑談』(KADOKAWA)がある。3月14日には初の料理本『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)を上梓。

 

取材・文/竹田理紀 撮影/矢島泰輔 スタイリング/戸倉祥仁(holy.) ヘアメイク/松田陵(Y's C) 写真提供/KADOKAWA

衣装クレジット(すべて税込):ニット4万9500円/SHOOP(Sakas PR) シャツ4万4000円、パンツ2万6400円/ともにATTACHMENT(Sakas PR)