テレビドラマに映画、舞台、エッセイ本の刊行と、マルチな才能を発揮している俳優の中村倫也さん。料理好きとしても知られ、3月14日には初の料理本『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)を上梓しました。超多忙ななか、自宅ではどのように家事をこなしているのか、お話を聞きました。

今まで自己流だった料理「自分、やってなかった!」の衝撃も

── 料理の撮影では、監修の先生とのやりとりも多かったようですね。普段から自由に料理を楽しんでいる様子を窺い知ることができました。

 

中村さん:普段から自己流で料理は作ってきましたが、習って作るというのはほぼ初めてで。料理監修のタカハシユキ先生が作ってくださったレシピをひと通り読んだあと料理を作り始めたんですが、調理に入るまでのちょっとしたひと手間とか段取りが発見でしたね。

 

例えば、食材の切り方、絹さやの筋の取り方。出汁をとるときには煮干しの腸は取ったほうがいいとか、マグロは一度火を通して臭みをとるといいとか、そういう料理のコツもはじめて知りました。料理の手順にも意味があって、逆にすると栄養価が損なわれたり、美味しさにも直結する。そんなふうに料理を科学的に知れたことも楽しかったですね。

 

中村倫也さん
『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)より

── 中村さんから普段から料理をしていることがよくわかります。

 

中村さん:ロールキャベツ風の雑炊を作ったときとか、キャベツの芯に隠し包丁を入れるのが驚きでした。「自分、やってなかった!」って。ロールキャベツは作ったことがありましたが、そのまま普通に巻いてできていましたから。でも隠し包丁のひと手間で確かに巻きやすくなる。ああ、こういう工夫もあるんだなあと、素直に勉強になりました。

 

そんなちょっとしたコツがありつつも、雑炊は雑多な食材と米を合わせて煮るだけの簡単料理ですから。いろんな食材を鍋に入れて煮るという調理法で、すごくバリエーションが広がるんだってことを知ってほしいです。

予定が狂っても「気にしない」

── 確かに雑炊って「忙しくてご飯を作る時間がない!」というときも頼りになりますよね。でも、自分で立てた予定が家族の横槍や突発的な出来事のせいで狂ってしまうと、せっかく準備した食材がムダになったりしてイライラしてしまいがちです。そういうとき、中村さんはどう立て直しますか?

 

中村さん:気にしない。しょうがないと思って、もう1回構築し直す。仕事の現場でも予期せぬことが起こったり、想定以上に体力を使ったりすることがありますが、最終的に帳尻が合えばいいと思い直して、「今日1日」というスケールで段取りをつくり直します。

 

「今日やってもいいけど疲れるだろうから、これは明日にしよう」と思うこともよくありますよ。最終的に間に合えばいいんですから。段取りを意識することは大事にしていますが、それも“希望的観測”程度にとどめておく。がんじがらめにせずに、ゆるっと手放してますね。

 

俳優の中村倫也さん

家事をしたら「ありがとう」と言ってくれる家族がいる尊さ

──「ゆるっと手放す」って、簡単そうでなかなか難しいことだと思います。どうしたら心のゆとりって生まれるんでしょう。

 

中村さん:自分の密かな楽しみとか、目的意識を持ってする趣味とかを、あえて時間を作ってすることで生まれるんじゃないでしょうか。そしてそのゆとりがあることで、いろんな悩みの根源的な解消につながる気がします。

 

僕は趣味もあるし、そもそもセリフを言っているとき以外は“素の自分”でいる感覚があるので、心にストレスを感じることってあまりないんです。

 

でも、心の充実感といえば、最近では家で家事をして感謝されたことでしょうか。それはひとりで暮らしていたときには得られなかった発見で。自分としては普段からやってきたことをしただけなんだけど、「やっておいてくれてありがとう」って。自分からアクションを起こすことで、周りから良い反応を得られて、またそれが前向きな気持ちに繋がることがあるんだってことも発見でした。と同時に感謝を言葉にしてくれる相手でよかったなって思いましたね。

 

俳優の中村倫也さん

── 家庭だったら、ちょっと気づいた家事をやっておくとか、仕事なら共有スペースを片づけるとか。そして感謝は口にする。確かにそうするといい空気が生まれそうですね。

 

中村さん:前向きなアクションにつながる動機づけを何らかで見いだせれば、ものすごくいい暮らしってわけじゃないかもしれないけど、充実感のある暮らしにはなるんじゃないかなって思います。

 

 

◆書誌情報
書名:THE やんごとなき雑炊
著者:中村倫也
監修協⼒:タカハシユキ
発売:2024年3⽉14⽇(⽊)
定価:1,870円(本体1,700円+税)
判型:A5判 ⾴数:136⾴(オールカラー)
ISBN:978-4-04-114256-1
発⾏:株式会社KADOKAWA

 

PROFILE 中村倫也さん

1986年、東京都生まれ。俳優。2005年、デビュー。近年の出演作にドラマ『ハヤブサ消防団』、映画『沈黙の艦隊』、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』など。映画『ミッシング』が2024年5月17日に公開予定、劇団☆新感線44周年興行夏秋公演いのうえ歌舞伎「バサラオ」(7月〜10月公演)への出演を控えている。著書にエッセイ集『THEやんごとなき雑談』(KADOKAWA)がある。3月14日には初の料理本『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA)を上梓。

 

取材・文/竹田理紀 撮影/矢島泰輔 スタイリング/戸倉祥仁(holy.) ヘアメイク/松田陵(Y's C) 写真提供/KADOKAWA

衣装クレジット(すべて税込):ニット4万9500円/SHOOP(Sakas PR) シャツ4万4000円、パンツ2万6400円/ともにATTACHMENT(Sakas PR)