熊本県の私立高校で家庭科教師として働く植田明依さんは、2024ミス・インターナショナル日本代表に輝きました。教師を志した理由から、普段の授業の様子について伺いました。(全2回中の1回)
家庭科教師との両立は
── 大学卒業後、高校の教師として働いているそうですね。いつ頃から志していたのですか。
植田さん:小さい頃からずっと運動をしてきたのとサッカー選手の兄の影響もあって、スポーツ栄養士になりたいと思っていました。高校生で進路を決める際に、管理栄養士の資格と家庭科の免許を取れる大学を選んで入りました。
小学生の頃からバスケットボールを続けているのですが、食事を変えるとパフォーマンスが上がるということに気づいてから、その大切さを伝えたいと思ったんです。大学で学ぶうちに、食生活の乱れなどから生活習慣病にかかる方が多いことを知りました。
社会に出る前の段階の子どもたちに関わって、みんなが健康に過ごしていけるような社会が作れたらいいなと思って教師を目指したのですが、家庭科は、生活に直結する内容が多いので、知れば知るほど魅力的な教科だと思います。教科の知識だけではなく、幅広く社会情勢についても学んで伝えるようにしています。
── 授業ではどんなことを教えているのですか。
植田さん:メインは座学ですが、調理実習や裁縫、編み物などもしますし、生徒を保育実習に連れて行くこともあります。調理実習で今年はお弁当などを作りました。学校生活のことはもちろんですが、将来についてのことや恋愛相談なども受けますよ。それに、部活ではバスケットボール部の顧問もしています。
授業ではちょうど今、円高円安などの経済について教えています。生徒の顔を見ながら進めて行くのですが「これは説明がたりないかな?」と思う時は、さらに噛み砕いて伝えるようにしています。なるべく授業中に覚えて帰ってほしいと思うので、大切なところは伝え方も工夫します。「私もここは高校生のときはわからなかったけど、社会人になって苦労したところだから、しっかり聞いてね」というように私自身のエピソードも交えて話しています。1度知識を入れておくと、大人になってまた出会った時に理解度が違うと思うんです。
── それは生徒も注目しますね!大会の準備をしながら教師との両立は大変そうです。
植田さん:もともと平日5日の勤務で担任も持っていたんですが、大会への出場を決意してからは、準備の時間がたりなくなってきました。そこから非常勤講師として週2日の勤務に変えてもらったのですが、家庭科は各クラス週に1回なので、まとめて入れてもらっています。他の先生も優しい方ばかりで。「やりたいことを全力でしてね!応援しているよ」と声をかけていただいて。
ただ、3月末でいったん教師の仕事はお休みして、世界大会の準備に専念する予定です。それでも「いつでも戻ってきていいよ」と言ってくださっているので、本当にありがたい環境です。
食生活は地元のものを中心に
── 体型維持のために、食生活で気をつけていることはありますか。
植田さん:ブームのものはあまり試していなくて、和食中心です。朝は白米にお味噌汁とタンパク質の卵や納豆、それにお野菜、果物も摂るようにしています。ビタミンがたりないと体の調子が崩れて行くので意識してとるようにしています。
実家が兼業農家なので、父が作ったお米を食べています。とっても美味しいんですよ。近所の方が作られた新鮮な野菜をお裾分けしていただくことも多くあります。
栄養素だけを考えて食事を摂る方もいらっしゃいますが、食事はひとつの楽しみでもあるので、視覚も心も満たされるものであってほしいです。
── 高校生くらいの年齢だと、ダイエットに意識が向いている子も多そうですね。
植田さん:SNSなどの影響もあり、痩せる必要がなくてもダイエットしなきゃ!と言っている生徒は多いです。SNSの使い方については、「誰かと比べるのもいいけど、現実を生きているんだから、携帯の中で生きないようにね」と、ことあるごとに伝えています。
栄養や食事について伝える立場なので、過激なダイエットはできませんし、生徒の前で絶対に痩せたいというような言葉は使わないようにしています。若いときのダイエットは将来的に骨などへの影響もありますので、食事と運動で健康的に理想の体になれることを伝えていきたいと思っています。
自己肯定感が上がるような声かけを意識していますね。高校生はだいぶ大人に近いのですが、社会に出た際により良い人間関係を築いて自分が望む方向に生きていけるようにというところを指導の軸に置いて、生徒と向き合っています。
PROFILE 植田明依さん
2024ミス・インターナショナル日本代表。1998年生まれ、25歳。熊本県宇土市出身。現在は家庭科非常勤講師として熊本県内の私立高校に勤めながら、モデルとしても活動。趣味はスポーツ観戦・旅行・器集め。
取材・文/内橋明日香 写真提供/植田明依